・・・屋外空間は植物を媒体として生活者が空間を半ば私的に専有すること(パーソナライゼーション)によって発生した場を基礎単位に構成されるいわばパーソナルスペースの集合体として捉えることができそうである。・・・これは空間のパーソナライゼーションが必ずしも公共性に抵触せず逆に公共性に至ることもあるという事実、あるいは公への配慮が個をも満足させ、その際植物が触媒的な役割を果たすということを裏付ける示唆に富む結果である。都営住宅一般でみられ るこのようなスタイルがその他の集住や公共空間でも実現されれば、都市の屋外環境は実に豊かなものとなろう。しかし、それは様々な理由から今日では難しい。パーソナライゼーションを認めない画一的な公共性解釈とそれを反映した硬直的な不動産の所有管理制度がそれを阻んでいる。植物を媒体とする空間のパーソナライゼーションとその集積という視点から、近代の都市空間を支配する制度の限界と新しい公共空間への可能性が照射できるのではなかろうか。

木下 剛、「私の庭から風景を見る -TOEI STYLE-」
10+1 No.24 フィールドワークの方法(2001.06) より


建設されてからの歴史が長く、住民の定住率の高い集合住宅は、 しばしば個人の生活の営みが敷地の中に溢れて、独特の「濃い」空間を作り上げています。特に都営住宅のように公共による管理のゆるやかな施設は、住民の私的な庭空間の集積が風景を作り上げて、「公共」や「私的領域」というような制度的な区別を無意味にするインパクトを持っています。


このページ群は、新宿戸山の都営住宅を中心に、戦後の集合住宅の庭の記録を試みる、「都営団地プロジェクト」の一環です。

都営団地プロジェクト by Y. Torii

都営住宅写真集 by tiroli


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