2009年9月 9日

フォッサ・マグナ・ボートハウス

瀝青会(れきせいかい)のフィールドワークに久しぶりに参加。といっても、1週間に渡る北陸方面調査のうち、最初の2日間の「糸魚川編」だけをお手伝いに行ったのだ。瀝青会の調査旅行は平日にかかることも多く、それもあって最近はサボり気味だったのだが、今回、事前勉強会で見た糸魚川の漁村の舟小屋の写真があまりに衝撃的で、これは実物を目撃せねばならないと思い、無理を言って糸魚川調査を週末にセットして頂いた。詳しい調査の成果はいずれ、「住む」の連載などに発表されるのだが、以下は個人的なメモ。

  • 十日町も松代も通過して着いた糸魚川駅は、赤レンガの大きな車庫が残る、なかなか味のある駅であった。富山と新潟の県境近くなんて、こちら(北多摩)からはほとんど地の果てみたいな感じがするが、上越新幹線と特急「はくたか」を乗り継いで行くと、調布 からでも3時間半くらいで着いてしまう。近い。

  • 事前の勉強会で見た糸魚川の舟小屋群はちょっと凄い様子だったが、実物は期待をはるかに上回る、ブリコラージュの権化であった。乾久美子さんがどこかで「設計された住宅と比べて民家は現在の形になるまでの『判断』の数が桁違いに多い」というような冴えたことを述べておられたが、船小屋なんてまさにそういう、「判断とパッチ」のテクスチュアに覆われた、物体的リアリティ満載の建築物だった。

  • 「民家のみかた調べかた」(第一法規出版、1967年)という本の存在を知らなかった。相変わらず無知きわまる>自分。参考図書として持参されていたコピーを借りて見て目から鱗が滝のごとくザラザラと落ちる。これは実によくできた、興味深い本だ。絶版になって久しいのが残念。1960年代、日本全国から伝統的な民家が急速に失われつつあった、それに対する危機感から、ともかくもできるだけ多くの人が短期間に多くの民家を調査し記録することを可能にするべく、素人でもわかる「原理」と「手順」を記載したフィールドガイド兼リサーチマニュアルが書かれた、ということらしい。

  • これを読むと、民家の調査は単に現況を測量するということではなくて、経験的に獲得・定型化されているある手続きを踏むことで、「家なるもの」を支える普遍的なルールと、そこから逆に透けて見える地域的固有性を抽出して記述することなのだ、ということがわかる。

  • 一見、朽ちかけの材木とゴムシートと石ころの寄せ集めみたいな小屋に、調査班が入って実測して図化すると、方眼紙に「間」のモジュールが抽出されていて驚嘆した。小屋は、それこそ夥しい判断の積み重ねの歴史によって、構造体まで含めてどれがオリジナルかわからないくらい、様々な材料に入れ替わっている。さらに、四車線のバイパス道路と防波堤とテトラポットによって浜/海と断ち切られた現在、舟小屋群は当初の用途を失って、農機具小屋として使われたりしている。素材もプログラムも大きく変わった小屋を、「小屋」たらしめているのはまさしく「ルール」の存在である。そして、このルールは空中にあったものじゃなくて、小屋的構築の過程で、木材と建築者との関係として「出ちゃった」もの、という感じがするのだ。電柱を転用した小屋の柱なんか触っていると、うっかり、建築(語弊があるなら「住宅」)とは何か、みたいな深遠な問いを立ててしまうぞ。教育的効果は抜群。若者よ民家を実測せよ。

  • 海岸の砂丘地形と船小屋と集落の母屋とに、なかなか面白い地形的関係が見られた。砂丘が個人所有されていなかったのは、その地形が海から集落を守るインフラだと見なされていたのか、あるいは単に不毛の土地だったからか。

  • 「半農半漁」だった集落の後背地は水田地帯。宅地化されている場所も多い。圃場整備された農地だった地区の街並みは、街路がものすごく真っ直ぐでキレイにグリッドで、道路からは住宅地と農地の境目が見えないため、東西南北にビスタが通った眩暈がするような風景になる。

  • iPhone のGPSとGoogleマップはそれなりに使えるツールである。測位のスピードが速いし、地図が詳細だ。コンパスも優秀。ただし、用途はあくまで「現在地を素早く確認する」ためだ。ログを取りながら、地図と地面を重ねながら移動、というような使い方は厳しい。電池ももたないし。

  • iPhone といえば、間抜けにも、先月以来メールの署名に書き入れていた新しい携帯の番号が間違っていたことを、レーニン先生のご指摘で知る。わざわざ「新しい番号です」といって皆に間違い電話を強いていたわけで、たいへん失礼いたしました。慌ててその番号にかけてみたら、幸いにも「使われておりません」メッセージが流れた。いきなり知らない人たちから電話がかかってくるようになった、という迷惑な事態だけは回避した模様。いやはや、冷や汗をかいた。

  • 土曜日、まだ先の長い調査に向かう参加メンバーの皆様にお別れを告げてひとり先に帰宅。お世話になりました。>瀝青会および関係者の皆様。

  • 2009年1月 5日

    横浜中華街の街区が周囲から振れていることで輪郭をなしている件

    去年、暮れも押し迫った12月27日(日曜日)。レーニン中谷氏らと、横浜の関内元町中華街付近を散探索した。

    中谷さんも僕もそれぞれ、学生に声をかけてみたのだが、さすがに時期が災いしてか、早稲田からも関東学院からも、参加者はゼロで、開港記念広場に集合したのは中谷夫妻と石川親子(僕と、長男6歳)のみというエッセンシャルなメンツなのだった。しかし、お陰でじつに効率の良い街歩きだった。話は通じるしポイント押さえるのに迷いがないし開港資料館での資料収集も速くて無駄がないし。

    それにしてもしかし、都市に向かう視点として、「先行形態論的」「環境ノイズエレメント的」「東京の自然史的」は文字通り「三種の神器」だなという思いをあらたにした。それらの「実践編」として、元町・中華街周辺はじつに、とても良い教材だった。やっぱり来ればよかったのに。お前ら。

    2008年10月20日

    お勧めレクチャー(予告)

    おお。

    来年のデブサミ2009に向けて、少しずつ動き出しています。そんな中で以下のエントリでご紹介した西村さんに出演していただくことが決まりました!うれしい。みんな、来年の2/12-13は予定を空けておくんだ。

    via: 世界を豊かに感じる (arclamp.jp アークランプ)

    西村佳哲は「僕の世界観に取り返しがつかないほどの影響を与えた5人」のうちの一人である。こんないいセンスをしている鈴木さんを企画スタッフに擁しているデブサミはラッキーだ。いや、なにも、僕が影響を受けたということが西村氏の凄さを説明していると主張するつもりは毛頭ないんだけど、彼がデブサミで講演するなら、それはぜひ行ったほうがいいぞみんな、という意見には、アルファギーク安藤さんもPingMag主催のヴィンセントさんも地図メカも、藤沢方面も仙台方面もみんな賛成してくれるであろう。西村の「講演」の機会はじつは珍しい。行ったほうがいいぞみんな。


    さらに行ったほうがいいイベント:

    緊急告知・長嶋康郎先生(ニコニコ堂)きたる・早稲田大学設計演習A, 2008年11月12日(水)

    via: 中谷礼仁・記録・2004-, Nakatani's Blography

    こここれは。水曜日の日中というのがキツイがうううむ。
    「ニコニコ堂ってなに?」という人は以下を購入して読むように。
    編集出版組織体アセテート∥ニコニコ通信・長嶋康郎著
    しかし、長嶋さんが講演する「設計演習A」のある建築学科っていったい。(←いい意味で)

    2008年1月18日

    手を横に。アラ危ない。頭を下げれば大丈夫。

    忘れないうちにメモ。

    1月8日(火曜日)。
    ナカツ不良講師先生に命じられて、関東学院で建築学科の1年全員を前に講義。持っていったラップトップと講義室のプロジェクターとの接続がうまく行かず、30分くらい四苦八苦してしまった。でもその間、学生たちはちゃんといい子で待っていてくれた。そのかわり、講義後に提出してもらった短文レポートに「すいません寝てました」と書いた奴がいた。。。少なくとも反省している点は許す。

    1月12日(土曜日)。
    上智大学で、上智の比較文化研究所主催の、「巨大都市東京を描き直す」と題したプチ国際会議に出席し、あろうことか英語でプレゼンテーション(10分間)。
    ・陣内先生がおられた。最初に陣内先生がスピーチをされると、それだけでその場が急に「オフィシャルな東京の研究会議」という感じがするようになる。ということがわかった。
    ・森川さんの秋葉原のプレゼンを初めて直接見た。すげーかった。
    ・これは実は、中谷レーニン先生の差し金なのであった。
    ・しかし、会場には田島さん太田さん佐々木葉さんもいらっしゃって、東京キャナルかと思った。

    1月17日(木曜日)。
    「デザスタ2」の最終講評会に、ゲストクリティークとして、ゼロスタジオの松川さんをお呼びした。講評会を始める前に、松川さんに、最近の仕事などを中心に、プレゼンテーションしてもらった。

    ・・・すごいものを見た。

    コンピュータを介する、というと、僕なんかつい、単に物事をデジタルに置き換えるみたいなことを想像しがちなのだが、それは僕のパソコン1.0な思い込みであって、アルゴリズム的なアプローチというのは、いささか気障な言いかたをするなら、世界の複雑さや多様さを多様なままに受け取ろうとする誠実な態度なのだ、と思った。話を聞きながら、ずーっと、「豊饒なツリー」の最小ピクセルのモノの可能性を「いくつか」しかないと逆説的に論じたアレを思い浮かべていた。とても似ている。というか、きっと同じことを違う表現で述べているんだと思う。エッセンシャルに記述された、エレガントなアルゴリズムはセヴェラルネスにほかならない。

    演習のありかたに対しても有用なアドバイスをもらったし、非常に楽しい、エキサイティングな講評会であった。松川さんありがとう。

    追記:
    松川さんのプレゼンテーションにあった、松川さん設計の美容院に関する記事。

    ・東北大の本江先生による見学記:
    http://www.motoelab.com/blog/20051230161304.html

    ・佐藤師匠によるインタビュー記事:
    http://www5c.biglobe.ne.jp/~fullchin/iru/sho/01/01.htm
    松川さんのプレゼンを見たデザスタ2履修生は読むべし。それにしても佐藤師匠のインタビュー術は天才的だ。

    2007年9月13日

    Go on Asphalt

    以下、イベントのお知らせです。

    歴史工学家・中谷礼仁氏、ランドスケープデザイン・石川初氏、建築史・清水重敦氏、同・御船達雄氏、写真家・大高隆氏を中心に、各分野の研究者が集まった「瀝青会」は、1年前より今和次郎『日本の民家』の調査地再訪を目的として活動を続けています。 これまでの研究成果と調査経緯は『10+1』No.43─48(連載中)「『日本の民家』再訪」、10+1 web site「BLOG・再訪『日本の民家』」http://tenplusone.inax.co.jp/project/kon/でお読みいただけます。

    調査の旅は現在も続いていますが、再訪予定地のおよそ1/2を巡ったいま、ゲストを招いてのトーク+写真家・大高隆氏による写真(未発表含む)公開イヴェントを行ないます。

    ご興味のある皆さまは、下記要領にてお申し込みのうえ是非お越しください。



    ■テーマ:今和次郎『日本の民家』再訪/民俗誌と写真
    ■開催日:2007年9月18日(火)19:00〜(21:00予定)
    ■場 所:東京・京橋INAX:GINZA 7階クリエイティブスペース(地図をご参照ください)
    ※ 近くに駐車場がございませんので、公共機関をご利用ください。
    ■出演者[敬称略]:
     - 田中純(表象文化論、東京大学准教授、『都市の詩学』近刊)
     - 菊地暁(民俗学、京都大学准教授、主著『柳田国男と民俗学の近代 >
     - 中谷礼仁(歴史工学家、瀝青会メンバー、早稲田大学准教授)
     - 大高隆(写真家、瀝青会メンバー)

    ■お申し込み方法
    お名前、ご所属、ご連絡先をお書き添えのうえ、「info@tenplusone.inax.co.jp」までメールにてお申し込みください。



    プログラム(予定)

    □1部
    基調講演:中谷礼仁「瀝青会の射程、日本の民家、日本人の住まい」
    特別講演:田中純「写真という方法、宮本常一」
    特別講演:菊地暁「民俗写真の系譜学、写真を読む力」
    □2部
    中谷×田中×菊地×大高:ディスカッション+写真公開「写真、民俗学、フィールド・ワーク」

    [これまでに再訪した調査地]
    神奈川県旧内郷村/埼玉県旧大間木村/東京都・甲州街道/徳島県旧日和佐町/徳島県石井町/徳島県旧三縄村/徳島県旧西祖谷山村/愛媛県松山市/高知県南国市/高知県上川口/奈良県生駒山/和歌山県紀ノ川/東京都伊豆大島など



    じつに残念なことに、僕は先約があって行けません。
    誰かぜひ行ってくれ。レポート求む。

    2007年9月 2日

    おまえらも要望送れ!すぐにだ!

    アセテート編集者日記

    でここからが本題なのですが、editorNの実名名義の中谷礼仁『国学・明治・建築家』という本の内容をもうネットで公開してしまおうかと思っています。古本が好きな方は定価の3倍以上の値段でどうぞ買って下さい。当方が20代に書いた若気の至りに充ち満ちた本です。"Look back in anger"って感じ。
    もはや自分ではセヴェラルネス以降な感じなのですが、この本は引用の多さで今でも有用だと思います。基本文献はおさえ、明治、大正、昭和初期の『建築雑誌』はすべて読んだ上で引用を厳選していますから(4割ぐらい引用!)、簡単な孫引きには今でも使えると思うのです。
    本当はもう一回きちんと改訂して、あわよくばアセテート以外から再版したいとも思っていたのですが、もう状況が許さなさそう。そりゃ本にした方がうれしいです。「読者の経験」という傷をつけられる物質になるから( by 山本貴光)。

    5人ぐらいの方から要望がありましたら(でもこの日記がトップから消えたら要望もなくなりそうですね)、中谷ゼミナール内にて、現在の目である程度改訂したものを公開したいと思います。その時にはネットならではの独自性を持たせなければならないのかな。


    熱狂的に要望。


    しかもうちは4人家族なので、4票です(4歳と3歳が有効票なら)。

    「ネットならではの独自性」というのは、目次や注釈や引用注がリンクになっていたり、各章の最後に「関連リンク」が並んでいたり、参照・参考文献がオンライン書店の当該書籍へのリンクになっていたり、そーゆーことでしょうか?

    (むろん、論文の書き方の練習であるのだからして、君らがお手伝い申し上げるのだ>ゼミの学生さんたち)

    2006年8月18日

    アンフィシアター・アパートメンツ

    「公開講座(フォーラム)・都市の血、都市の肉〜千年持続学第5回フォーラム」を拝聴してから、ほぼ1年半。
    身辺メモ: 都市の腸詰め(血と肉)

    ルッカの円形劇場遺構中庭付き住宅地のペーパークラフト販売してくれないでしょうか。アセテートで。

    アセテートから、「都市の血肉」がシリーズで出版される。しかも、

    アセテート編集者日記

    ただいま編集中の『ルッカ 一八三八年』の付録、円形闘技場遺構のペーパークラフトが本日届きました。

    うおおおお。これは買うぞ。

    編集出版組織体アセテート‖シリーズ・都市の血肉‖彰化・一九〇六年 青井哲人

    ここ、これは買うぞ。

    アセテートの「都市の血肉シリーズ」の紹介ページには、Google Mapその他の参考リンクが掲載されていて、これも非常に面白い。うーむ。中谷さんが「読みたい本が出ないなら、出版社を作ってしまえと」思ったという意味が少しわかったような。

    人間のために都市があるのではない。都市のために人がいるのだ。

    これが何のことやらわからないラ系の諸姉諸兄は、10+1 No. 37「特集:先行デザイン宣言」を購入して読むように。上記は、記事の終盤でいささか逆説的に述べられている「機能は形態に従う」というテーゼと同じ意味のことだ(あるいは、都市のなかで「巨樹」になっちゃったケヤキやサクラが、それ自体を保存する「運動」を誘発する強さを持ち始めたり、ケヤキの枝振りや樹高を参照することが建築の設計の「正しい作法」になったりすることを思い起こしてもよい)。件の日本橋問題にも、有用な補助線を引いてくれる視点だと思う。

    2006年1月 4日

    年末年始の「いくつか」の本。

    年末年始本。

  • M. G. Turner, R. H. Gardner, R. V. O'Neill著、中越信和・原慶太郎訳「景観生態学」文一総合出版、2004

  • 調べたいことがあって再読。

  • 野中健一編「野生のナヴィゲーション 民族誌から空間認知の科学へ」古今書院、2004

  • カラハリのブッシュマン、極北の雪原のイヌイト、マレーシア熱帯雨林のオランアスリ、ミクロネシア・カロリン諸島の海の民、といった狩猟採集民族が、どのように空間を認知して広大な土地を正確にナビゲーションしながら移動しているか、という報告。たとえば、ジャングルのオランアスリが身につけている、河川の流域の認知地図は、個人の出生やエピソード、そのときの集団のキャンプ位置など、「個人と川とを結びつける」クロノロジーとして記憶されるという。「海の民」のナビゲーションはちょっとすごい。周囲に島も何も見えない大洋上で、星座によって「方向」を把握しつつ、「エタック」という「見えない(想定された)島」を支点にした「仮想グリッド」に乗ってカヌーは進む。
    「移動するUCS」とでも言いましょうか。にわかには想像できないような「認知地図」。
    僕なんか、eTrexの電池が切れた時点で完全にロストして、その日のうちにサメの餌になるであろう。
    きっと、スリバチ学会長の皆川や、浅草キッドの水道橋博士は、この「エタック」が見えているんだろう。

  • 中谷礼人「セヴェラルネス 事物連鎖と人間」鹿島出版会、2005

  • 「いついかなるときにも、私たちは何かに触れている。これは実に驚くべきことではないだろうか。」

    「都市連鎖」、「先行デザイン宣言」、「都市の血/肉」と、ようやくにして、中谷氏の思想が(少しずつ)わかってきた(ような気がする)。

    それにしても、「先行デザイン宣言」はよくできているなあ。なんか、去年は1年間そればっか言い続けてきたような気もするが。読めば読むほど、見れば見るほど、もう、いやになるほど素晴らしい。どーしてこれが、特にラ系のあいだでもっと話題にならないのかわからない。

    まあいいや。原稿書かないと。

    2005年4月18日

    それこそ「外部化された無意識」としての、グリッド。

    国土地理院・地図と測量の科学館、企画展第8回:地図屋さんの作品展
    入館無料。行きたいなあ。あーどーして筑波なんだ国土地理院。


    清水さんもコメントされていた、「グリッドの拘束力」について考えてみたり、しているのである。

    繰り返しになるが、公開講座を拝聴しつつ思ったのは、グリッドという、理念というか、抽象的な「ルール」がその土地に存続した、というよりは、やはり道路の造成平面という空間の形態が、機能を要請したと見るほうがいいんじゃないか、ということだった。

    でも、それは、グリッドを具現しているレベル差が存続するメカニズムを説明できても、グリッドが越境して隣地を埋めたりするほどの慣性を持っていることや、そもそもなぜ「グリッド」が首都のカタチとして選ばれたのか、ということについての説明にはならない。

    グリッドに「拘束力」があるとしたら(あるように感じるが)、それは、ピラミッドパワーみたいなものがグリッド自体に内在するわけではなく、グリッドと人との間に成立する「関係」が持つ力のようなものである(でも、それも、グリッドに人間が思わず「反応」するわけだから、「神秘のグリッドパワー」と呼んでもあながち間違いではないかもしれないけど)。

    ここで思い出すのは、本江さんが以前に書かれていた記事。
    Motoe Lab, MYU: 三角のほうが四角よりむずかしい

    「四角」の連鎖である「グリッド」は意外と、人間の身体性に由来するのかもしれない。グリッドを目にすると、僕らはつい、そこに普遍的な秩序や規則を見取ってしまい、それがあたかも人間のスケールと無関係な、高次の「理念」をその土地にアプライしようとしたかのような気がしてしまい、「荒野に描かれた幾何学図形」だと見なすけれど、実はグリッドはけっこう「気持ちの良い」、身体と親和性の高いカタチなのかもしれない。

    現実の土地の上では、グリッドはしばしば、地形に邪魔されて破綻する。比較的平坦に見える土地でも、実際はでこぼこしているし、日本のように山がちな地形だと、余計に「格子柄で行ける土地」の広がりには限りがある。だいたい、平地は「平面」ではない。地球は丸いから、グリッドで地球を覆うことはできない。緯度経度は、多くの人が住んでいる中緯度帯ではなんとかグリッドに見えるが、ちょっと南北極に近づけば、経度線はやたらと近くなるし、緯度線は明らかに曲線になってしまう。地上のグリッドは、きわめて限定的な範囲に擬似的にしか成立しない、ローカルな図形である。

    で、その「グリッドを描きうる範囲」というのが、その土地での人の認知の射程距離にだいたい一致していて、それが「グリッド都市」の規模(というか物理的な大きさ)を決めていたりして。

    と、藤村さんのジャーナル:
    round about journal
    まあ、たしかに、こういう思いつきかたがローカルな心情なのかもしれないけどな。僕は度し難くドメスティックだし。

    2005年4月12日

    平城京の青焼き

    「スカイビュースケープ」が奈良盆地もカバーしていることを見つけたので、清水さんのレジュメをもとに、「平城京の遺存地割」を探してみる。


    空撮写真を使った「鳥瞰」。
    すげー。本当だ。水田やミニ開発の形に「朱雀大路」が見える。

    農地と市街地が混在しているので、最近の宅地や道路もグリッドに沿って建設され、「期せずして」条坊の模様を「補強」してしまっていることがよくわかる。


    真上からの空撮写真。画面中央のあたりと、画面右下あたりでは、水田の地割りのプロポーションが異なっているのが見える。中央部は横長で、右下のほうは縦長だ。


    同じ縮尺で地形を表示すると、水田の模様が「等高線」であることがわかる。「もと道路」の部分はおおむね整形に区切られ、グリッドの「中」はけっこう複雑な割り方がされていて、この対比が条坊パターンを浮かび上がらせている。道路の平坦さの効果だ。たしかに、道路はどうしたって微地形を改変して平坦にせざるをえないが、宅地内まで平坦に造成するのはものすごい大工事だし、必要もなかっただろうしな。
    しかしこの、緩やかに傾斜した盆地はじつに水田向きな土地だ。


    空撮画像:デジタルアーステクノロジー「スカイビュースケープ」
    地図画像:国土地理院「数値地図25000地図画像」+「50mメッシュ標高データ」

    ■追記:
    カギ差し込んで開けようとしてる人がいます。ぶわははは。