2009年10月16日

ヒグレカメラ

(あるいは、エアタグの「時間性」について)。

「セカイカメラ」のエアタグについては、つい「位置」に関心が向きがちだが、もうひとつ見逃せない属性として「時間」がある。ポストされるひとつひとつのタグには、「時間」が刻印されている。これらは、位置の情報と同じくらい「固有」な情報である。タグは、タギングの瞬間の「時刻」を切り取って固定する。ポストすることは、その時刻を位置にマップすることである。つまり、「エアタギング」というのは、「固有の時間を固有の位置に結びつける」という行為なのである。

ようするに、これって「場所に時刻スタンプを押してゆくみたいなものだ」ということだ。

と、そのように考えてみると、ひと目で時間の推移が写真の様子に表れるような、たとえば刻々と色が変わる日暮れ時の空などを、移動しながら撮影してポストして、あとでそれを眺めると、「時間の流れが空間の奥行きになって見える」みたいな風景が見えるんじゃないか、と思ったわけだ。

そこで実験。

職場の前、向こうにミッドタウンを望む街路。
IMG_0767

日没時を狙って、空の色が濃くなってゆくのを見ながら、10mずつくらい前進しては空を入れた写真を撮って、ポストしてゆく。

ある程度時間間隔をあけないと空の色が変わらないため、仕事をしながら10分おきに事務所の外へ走り出たり戻ったり、不審な動きを繰り返してしまった。

日没後。
IMG_0768

また、エアタグの表示フィルタを「自分のタグ」だけにし、西方向をセカイカメラで見る。
IMG_0770

おお。これはきれいだ。これは面白い。
遠い写真ほど、夕焼けが濃く、空が暗くなっている。キャプチャーで再現しきれないのが惜しい。
IMG_0771

「さっきの夕焼け」と「いまの夜空」を重ねてみる。
IMG_0774

面白いのは、ポストした写真群を辿りながら西へ歩いてゆくにつれて、画面に流れてくる空の写真の時間が「進む」ことだ。
歩くことで時間が早回しに進む。
遠くほど、あとの時間。
この、「移動」と「時間」が結びついた、不思議な感じ。
IMG_0777

IMG_0776

多摩川の土手とか、そういう大きなスケールで開けた場所などで、」もっとずらっと並べてやると、さらに効果が現れるかもしれない。
IMG_0778

ちょっと眩暈がするような実験であった。

最近、同じような機能をもった「Layer」というアプリがリリースされたことで、セカイカメラの特性が逆に浮き上がったように思う。デジタル地図を実空間の映像に効率よく重ねることを主眼にしたらしい「Layer」(地面にグリッドが描かれているのは象徴的だ)と比べると、セカイカメラには「普段眺めている世界の見方を少し奇妙に引っ張って広げる」というような不思議さがある。僕は、たとえばGoogleマップよりもGoogleEarthのほうに感じるような、その「不思議さ」にこそ惹かれるし、ツールとしての可能性を勝手に感じちゃうのである。頑張れセカイカメラ。

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コメント

天文学的スケールになると、リアルで「遠くのものほど昔の時間をみている」というのを思い出すね。
遠くの映像を古くすると、歩くにつれて時間をさかのぼる感覚になるんだろうか?

そうそう。これ、画像タグは常に「こっち」を向いて表示されるから、向こう端まで歩いて、振り返って逆を見ると、時間が逆転してみえる(遠いほど古い)。歩調に合わせて時間の「早回し速度」に変化が出るのも面白い。

だが、石川から3m離れて立っている俺には、1億分の1秒前の石川の姿が見えているが、30センチの距離まで近づくと、石川の姿は10億分の1秒前まで「新しく」なるということがリアルでも起きるのだ。
しかし、その距離感に耐えられず、25光年のかなたまで離れると、経堂界隈をうろつきまわり、喫茶店でコーヒーを飲む大学生の石川(と俺自身までも)の姿を見ることもできるというわけだ。観測できれば。

あと狛江のアイホップ(ピラフとコーヒーで納豆味)もあったな。侮れない25光年。

あと、20光年くらい離れてみると、ガールフレンド(むろん、いまの奥さん)とタンデムでツーリングして、夕方に送り届けたあと、彼女が被ってたメットの匂いかいで「おお!いいにおい」とか言ってるイマイも観察できるわけだな。

そう、そのみっともない姿は、地球(というか、そのとき俺がいた地点)を中心とした半径20光年の球面上のどこからでも観測する事ができるのだ・・・と、考えると・・・あああああっ

でも,地球の陰になっている半球面からは見えない・・・などということも何の慰めにはならないのだ

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