2009年2月 4日

批判的牧歌主義

ここ数週間、ついにお隣のお庭のデッキの増築改修をお手伝いしている(自宅のDIYのやることがなくなったわけではないのだが)。一緒にホームセンターへ行ったり、工具のアドバイスをしたりして、これが、なんだか非常に楽しい。もうご近所中の庭のデッキだの物干し場の屋根だの物置だのを作って回りたい。東急ハンズの電動工具売り場あたりにいる、ベテラン然としたエプロン姿のオヤジさんになったような気持ち。売ってないのかなあのハンズのエプロン。ところであの、工務店OBみたいなごま塩頭のDIYアドバイザーたちはどういう人たちで、どこから来るのだろう。

そういうわけで、最近は、一仕事終えてお隣のご主人や奥様らと雑木林の木陰で一休みしてお茶飲んだりするのが「いつもの週末」になりつつある。

ところでここ数週間、関わっている計画の対象地に足を運んでは、対象地をユニークにしている環境要素を抜き出して記述するというような作業に従事しているのだが、それにしてもなぜ建築や土木や都市計画や、つまりいわゆる造園プロパーでない専門家ほど植物が象徴する自然のシステムというか、植物群によって形成される環境や景観に関してかくも楽観的で牧歌的でロマンチックなイメージを抱きがちなのだろう。緑とか森とかいう語でひとくくりにするには、植物が顕在する環境はあまりに多様で、しかも具体的なのにだ。

とまあかくのごとく、僕にとって週末の「雑木林浴」は決して仕事の疲れを癒すとかネジを巻き戻すとかそういうソトコト的レクリエーションではなくて、「緑のセンスを磨いて鋭利にしておくトレーニング」なのである。近年、敵はしばしば緑色をしているのだ。

上記と直接は関係ないが(気分的にはかなり重なってはいるのだが)、さきごろ、件の藤村さんのビルディングKを見学した。いや、建築的に様々な指摘があるだろうことは容易に想像できるが、僕はビルディングK支持。あとは個人的に、批判的工学主義をサポートする批判的造園主義のプロが近くにいるといいなと思った。サカシタさんよろしく。

以上取り急ぎメモ。

地には時間を。

Google Earth 5.0 (ベータ) の新機能
数十年分の歴史的イメージで見る世界の変化

世界の変化の歴史を、Google Earth で過去にタイムスリップして見ることができるようになりました。クリック 1 つで、ドーナツ化現象、氷床の融解、海岸浸食などを確認できます。

Google Earth

これは地図的に大きな変化だ。ことによると、建物の3D表示とか地形表現などよりもずっと、より根本的な変化かもしれない。この機能、見かけ上の派手さはそれほどないが、ボディブローみたいにじっくり「効いて」きて、空撮写真に対する意識を変えちゃうんじゃないかと思う。

マップに歴史軸が加わったのだから、歴史的なできごとと言って良い。建物が壊されたのが何年の何月で、新たな道路がいつ開通したのか。建築史的、都市史的な基本データは、今後これを参照すればよくなりそうだ。

建築浴のおすすめ Google Earth 5.0で時間旅行

倉方さんがおっしゃるような、地図に新しい「次元」が加わったという点もさることながら、「表示している最新の空撮写真もしょせん年表スライドバーの上のひとコマに過ぎない」という相対化を何気なくしているところが、じつは凄いと僕は思う(Googleがどこまで自覚しているかはともかく)。

ここ10年の都心の再開発、高層ビル建設も見物だが、埋立地の「地形の成長」も興味深い。

中央防波堤外側埋立地の成長。97年。

2002年。

2007年。


ここ10年の変化が激しいといえばこの都市だ。北京空港2003年。

北京空港2008年。


北京市内のスラムクリアランス、というか、古い住宅地の再開発の様子。
なにせ規模がすさまじい。2002年。

どろろーん。

ぱ!! 2008年。ニンジャかおまえは。北京。

2009年2月 2日

偏愛のインフラストラクチュア

@nifty:デイリーポータルZ:「テトぐるみ」がかわいい

どういう進化心理学的背景があるのか、私たちはしばしば、そのような意図で作られていない工業製品にある種の美を見出す。その美は、その対象にある操作を加えて、もともとそこに課されていた「オリジナルの意味」を払拭してみることでより際立つことがある。これは景観工学的用語の「異化」の手続きと重なっていて、その意味で「異化」は模型にしたり人形にしたりして猛獣や機械を「無害化」「愛玩物化」する行為にとても似ている。

バドン|マニアパレル:【テトぐるみ】通販開始中 - livedoor Blog(ブログ)

underconstruction: 「テトぐるみ」の作り方

ちなみに、僕はこの構想を小林さん杉浦さんから伺った際に「10個買う!」と豪語したくせに、実際のモノを手にとって「やっぱ4つ・・」と注文数を減らしたヘタレ購入者なのだった。むろん、水門・佐藤さん、スリバチ・皆川さんらもテトグルミオーナーである。

さて、我が家(自宅)はおそらく、PC消波ブロックの殺伐としたテイストからはもっとも対極にあると思われる、北多摩の武蔵野台地の、国分寺崖線の湧水の雑木林の里山な環境を享受する牧歌的なロケーションなのだが、

tetra01

裏庭の揺り椅子に置いてみました。

tetra02

この違和感のなさは、こいつは場所を選ばない、つまり、単にこのPCブロックの造形が優れてキレイなんだということを示唆しているのであろう。

つまり、この記事は、「田舎の人もどうぞ」というサポート記事なのである。

いや、違和感ないってばよ。

tetra03

コドモに人気。部屋の中では、ソファーの周りに撒いてちゃんと「海ごっこ」をするのがやや末恐ろしいのだが。

追記:

水門師匠の消波ブロック・防寒仕様:
Das Otterhaus:うちのテト
「異化」のうえにさらに「擬人化」するという斜め上への二回半捻り。

追追記:

余波がこちらにも押し寄せていて、あらためてこの大反響に驚いた。大山さんのプロデュースぢからと、デイリーポータルZの優れたマニア・メディア性に敬服。じつは大口叩いたくせに少ししか買わなかったために小林さんらにご迷惑おかけしたんじゃないかと心配していたのだが、まったく杞憂であった。

僕にお問い合わせ下さっても何もお返事できないので、以下、差し出がましいが、

  • わかる人にはわかることだが、素材から大きさ、色まで、PC消波ブロックのフォルムをうまく伝えながら、愛玩品としてひと目で一発で可愛いと感じるモノに仕上げるために、いくつもの試作を含めてかなりのエネルギーが注がれた。ヌイグルミ自体のプロダクトデザインの良さがこれの魅力である。

  • 値段に関して、少なくとも今回のこれの販売で「利益」をあげる人は誰もいない。むしろ、労力や経費を考えれば赤字である。「作った人自身がいっぱい欲しい」→「それにはある程度まとまった数を生産するしかない」→「せっかくなのでお分けしたい」という素朴なコンセプトで実現していることを、ご理解頂けると幸いである。