2008年10月10日

街へ出よ、驚愕せよ。

関東学院の「デザインスタジオ2」が始まった。

久しぶりの金沢八景。遠い。

去年や一昨年に履修した学生たちがスタジオ周辺をうろうろしてくれて、心強くも嬉しい。今年は最初に、3月にちょっと実験したワークショップのやりかたで始めさせてもらってみた。けっこう消耗したが、思わぬ冴えた発表が出てきたりもして、今年もまた、苦楽両方味わう予感がする。

ナカツ不良講師先生によれば、教員の頭には「去年のクラスの最後のころ」の記憶しか残らないため、大学の演習ではえてして、毎年少しずつ、学生に対する要求の水準が高くなってゆく傾向があるそうだ。なるほどたしかに、僕もこの3年間の、それぞれのクラスの最後のころの、よくやったなみんな、というような思い出ばかり浮かぶ。なんか、毎年のように、おい、去年のキッズのほうが手も動いたし、発想もユニークだったんじゃね?と思ってしまうような気がするが、それは前年の最後のほうの、成長したあとのクラスのことしか覚えていないからなのだ。うん、きっとそうだ。

そういうわけなので、まあ、演習が進むにつれて開眼して練れて研がれてゆくのだろうと信じているが、等高線と境界線と海岸線と住宅地と大学施設がめくるめく交錯する六浦の地図を前に、なんかヘンだと思う箇所なんていくつもあるだろ?と問い詰めた僕に面と向かって、何がヘンなのかわかりません、普通だと思うんですが、と、本気で白状されて途方に暮れた。

いや、変だと思えよ。びっくりしろよ。建築学科だろうがよ。ずれたグリッドが衝突して、その接点のヘタ敷地に無理に建ってる施設の様子とか、鉄道線にブチ断たれた街区の痕跡とか、丘の上に新しく開発された集合住宅へのアプローチ道路の地形との戦いぶりとか、団地をジグザグに横断する市域境界線とか、そういうのに「ん?」と引っかかるメンタリティを持てよ。それで現地へ出かけていって2度びっくりしろよ。街の風景に驚けよ。多くの人が見過ごしたり見慣れたりしている何気ない街の様子に、引っかかったり驚いたり怪しんだりできないと始まんねえよ。たかだか20年間で育んだおまえの「あたりまえ」なんて全然だめでショボいことを思い知れよ。「デザイン」なんてそっから先だよ。

そういう感受性がないと、街灯に照らされたジャンクションとか屹立する鉄塔とか水門とか工場とかダムを愛でることもできないし、中央分離帯でピクニックしたろーかとかいう発想もわかないし、「いついかなるときにも、私たちは何かに触れている」とか、「つまり、都市は環境ノイズである」とか、「没場所性の物質的豊かさと場所の最良の質とをつなぎあわせる地理学はあるだろうか」とか「3次自然の緊張感」とか「都市を舞台としたアニミズムをめぐる「草木虫魚の人類学」が書かれうるのではないだろうか」なんていうフレーズに戦慄できないし。。。というのはまあいいけど。もう少し後でも。

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コメント

こんにちは。
今日は新潟のT高校に言って模擬講義(一応大学の営業というわけです)してきました。
ルッカとか古墳とか見せたらえらく反応していました。
学生の他先生も!
この学校の場合はどう考えるかとか。
うけるとおもうんですけどね。

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