2008年7月17日

ライト・ストラクチュア(ボルネオ編)

先週、マレーシアのコタ・キナバルという海沿いの街に出張した際に、プロジェクトの敷地近くの水上集落を見学した。

これが、先述の大工仕事をもっとずっとプリミティブでワイルドにしたような、「野生の意匠」の権化みたいな風景だったのだ。

物干し台の原型、というにはいささかスケールと数量が桁外れだが、こうしてみると、「大工さんの物干し台」がじつに、アジアの風景に思える。

通路は幅1200くらいのボードウォークである。これが路地みたいに家々の間を縫って続いている。というか、順番から言うとボードウォークがまず伸びて、それ沿いに家が建てられるらしい。

柱が不安なくらい細くてかっこいい。柱や梁はだいたいウリン材であって、この細さ。地元の木がハードウッドなのだ(ウリンの産地なんだから当然だが)。

家々の軒が深くて勾配が浅くて、何気に窓がジャロジーだったりする。

ちょうど引き潮だったようで、ボードウォークの下に砂の広場が出現していて、子供たちがたくさん遊んでいた。

電気も水道もちゃんと引いてあるし、それぞれの家にはテレビの衛星アンテナがついていて、けっこう豊かな生活をしているように見えた。でも、排出系インフラの整備が駄目なようで、陸に近い箇所にはゴミが打ち寄せられていてすごいことに。

汚水の配管もなかった。たぶん、そのまんま海に直放流なんだろう。

住民の人たちは非常に気さくでフレンドリーで、村に踏み込む際に勝手に予想したような警戒や敵意をぜんぜん感じなかった。田舎だからかもしれないが。特に子供たちの生き生きとした様子が感動的で、むろん、こちらは旅行者的に身勝手な立場ではあるのだが、なんかこう、心が洗われるような気持ちがした。

自分が構えたカメラのファインダーがそのまんま、リアルタイムで「ナショナル・ジオグラフィック」みたいだった。

この村の空撮:

大きな地図で見る
陸地側の中央付近にモスクがあるのが見える。モスクは、周囲の区画と無関係にメッカの方角を向いているので、街路に対して振れた角度をしているため、一目でそれとわかる。


あと、これは水上集落と関係ないけど、敷地の近くに完成したばかりのオフィスビルの地下駐車場。まだ車が全然入っていないので、なんとも非現実的な光景だった。

ちょっと、大山さんの写真を思わせる。

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