2008年7月17日

ライト・ストラクチュア(日本編)

通勤の途上、電車内で余白のないスケジュール手帳を眺めていると、あまりのことにこのまま目的駅で降りずに乗り続けて行方不明になってしまいたい抑えがたい衝動さえ覚える昨今、それでも週末は必ず仕事を休むようにして、裏庭にデッキや雨よけ屋根なぞを自作しつつあり、そのためもあって、最近、街を歩くごとに他人様の家々のデッキやカーポートや物干し場の造作が気になる。

そういう目で眺めると、こうした住宅の「外付け」施設には、住宅本体以上にその家の住み手の事情が反映されていたりして、そのバラエティが興味深い。

僕が好きなのは、こういう簡素な木造に波板を乗せた、シンプルなやつである。

これは、柱が鉄で屋根だけ木の混構造。

これはぜんぶ鉄だが、この細い片持ちが素敵。

これも構造はハイブリッド。接合部の仕口がよい。

これは、柱の細さと、梁の飛ばし加減が印象的。

これは、僕の通勤路上で最も気に入っているもの。

反対側から。接合のディテールといい、材の太細のメリハリといい、全体のプロポーションといい、ペンキの白さといい、もう見とれてしまう。材料の大きさの単位が尺寸だからだろうが、寸法のありかたが身体的で、なんともセクシーである。

また、屋根の上にまともに乗っている、絵に描いたみたいな「物干し」なのが素晴らしい。最近の住宅はほとんど総2階だから、こういうのは望むべくもない(我が家も同様だ)。

これはぜんぶ鉄で、柱が通ってなくて、柱自体が筋交いみたいなことになっている。駐車スペースの確保のためだと思われる。

これはアルミの、おそらく既製品のキットである。

見ると、アルミの既製品にも意匠の歴史があることがわかる。古いものほど、様子が木造に似ている。

それが、新しくなるにつれて、アルミやポリカの物性を生かした形態になってくる。

たぶん、当初、アルミの部材は木の代替品として出てきたのだろう。それが、次第に「素材に素直な」合理的な作られ方になってきたのだろう。カーポートのモダニズム。最近のものほど部品の点数も少なそうだし。

一方、たとえば「カーポート 木製」などと画像検索すると、2x4材を使いまくった、ウッディで極太の構造物がぞろぞろと出てくる。これら、「アルミ+ポリカ既製品」と「ウッディ極太」が、たぶん僕らが今日最も目にすることが多い「住宅の外付け施設」の姿である。

あの、屋根の上の白い物干し台のような、「建築家なしの建築のプロ」とでもいうべき、「大工さんの仕事」はどこへ行っちゃったのだろうか。なんか、アルミ成型の工場と、エクステリア屋とが、大工さんをリプレースしちゃったような感じである。

と、実はここまでは次の記事への長い前振りなのだった。

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