「ぽむ日記」にデビュー。
ぽむ日記 2007年 10月
今後、僕のことは「けんちく系芸人」と呼ぶように。
先週、火曜日。
「『新スケープ』の著者を囲んであーだこーだと話を聞いてみる夕食会」を行うべく、思い当たる人々に声をかけて、夜、赤坂の中華料理店に集まって頂いた。中央アーキのみなさん3人と藤村龍至さん、ぽむ企画桂さん、大山総裁、住み団小林さん、千葉大の八馬先生、地図メカ元永さん、タケダ@調布市民、フリックスタジオの小園さん(最近、いろんなところでフリックスタジオのエディターにお会いするが、そのたびに違う人なのだ。奥が深い)、僕の勤め先の若手スタッフ、エンジェル・ササキ。うむ。ちょっと嬉しがって集めすぎたかもしれん。
僕自身は非常に楽しんだ。というか、興味深かったというか、いろいろと考えさせられた。本にサインももらったし。
弁護士、じゃなくて、寺田真理子さんをして「居眠りしていてもシンポジウムのレポートを書ける」と言わしめる「ラウンドアバウト・ジャーナリスト」によるレポート:
新スケープ vs 旧スケープ (round about journal)
いやべつに煙たがってねえってばよ。
でも、説教部屋っぽい空気にしたとすると僕の落ち度である。そういうつもりはなかったのだが。こっちとしてはむしろ、都市・郊外・団地・工場系に取り囲まれて四面楚歌化し、里山に追い込まれたという感じだったんだけど。
中央アーキの皆さんが辟易していたらすまん。でもまあ、「出版する」というのはそういうことだ。読者はこっちが困惑するくらい深読みするし誤読する。それもネタだと思えばさ。
帰路、地図メカとも話していたんだけど、もう少し違うセッティングで、ゆっくり話を聞いてみたいと思った。
話が展開するうちに以下のような構図が浮かび上がってきた。
新スケープ:団地、工場、高層ビル、首都高 etc...=郊外的、テクノスケープ的
旧スケープ:合掌造り、棚田、里山 etc...=正統的、伝統的
まあね。実際に僕らが話した内容もそういうまとめを示唆する方向だったのだろう。分かりやすいし。
でも実は、ほんとうはこれこそがずっと残念に感じていることなんだよなあ。上記のような対概念化はたとえば、僕の周辺で言えば、いわば「保守的ラ系」の言説に顕著だ。論者によっては、「郊外的、テクノスケープ的」な景観を称揚する物言いが、価値観を相対化することで都市の資本の論理に加担することになる、と、その政治性を批判し警鐘を鳴らすものもある。この「構図」では、「郊外的、テクノスケープ的」は、言ってみれば新奇な趣味として「ひと括り」である。
でも、もう言うまでもないが、「工場萌え」や「恋する水門」の、対象への接近のしかたと、「新スケープ」のそれとはいささか異なっている。工場やダムや水門は物体的な延長や輪郭を持っていて、景観的強度とでも言うべき「ランドマーク性」を有している。一方で、「新スケープ」は(それは著者ら自身が説明するように、揚げ足を取られたくないという気持ちがそうさせたという一面はたとえあるにせよ)「まなざしの提示」であって、その対象の選び方もどこか消去法的で、「遠巻き(@Motoe_LAB)」である。さらに、「団地」がある。大山さんの「団地」は必ずしも絶景系テクノスケープではなく、「新スケープ的手法によるランドマークの潜在性」とでもいうような宙吊り感がある。近年、「郊外的、テクノスケープ的」を享受する視点はけっこう多様になりつつある。
一方で、「旧スケープ」のリテラシーはどうよ。なんかこう、わくわくする「再発見」が感じられないのは、冴えた人材がみんな都市に行っちゃってるからなのか、あるいは僕自身がそういう斜に構えた目で見ているからか、どうも「社会善」に寄り掛かってしまって停まってるような気がするのだが。以前、木下先生が「パストラル度」というちょっと皮肉っぽい「田園景観評価」をやっていて、あれは面白いと思ったけどな。田園風景は、いつのまにかその「付加価値」を払拭するのが非常に難しくなってしまった。
「空撮」はひとつのやりかたではあるのだった。
Designs on the Land: Exploring America from the Air
Taking Measures Across the American Landscape
藤村さんのいう「(おそらくは都市を作る側にいるという自覚をもった)批判的に乗り越える」とはまた違うだろうが、「新vs.旧」の対立の先へ進むことが、僕自身にとっても踏まないといけない手続きである。ような気がする。
「デザインされた風景」や、いわゆる「美しい景観」についてはどうだろう。という宿題もあるな。ううむ。まいったなこれは。
追記:
そういえば、この翌朝、何気なくテレビをつけたら、NHKの朝のニュースで、「工場景観が熱い」という報道をしていて、あろうことか、ちらっと「工場ナイト」の光景が映り、その後「千葉県が観光資源として港湾沿いの工場のツアーを企画している」という話になり、工場の「中の人」に対して「見どころ」を説く八馬先生が映った。・・・これは何かの啓示なのか。