2007年9月12日

大島行きのスローフライト

先週末から今週にかけて、伊豆大島へ旅行。

本来、この企画は「今和次郎『日本の民家』再訪プロジェクト」の一環として進行中の、伊豆大島への調査旅行をお手伝いするついでに、長男の誕生日イベント家族旅行、という趣旨だったのだが、結局、時間配分的に逆になり、家族旅行のついでに調査にちょこっと合流して一瞬だけ手伝ってすぐ離脱、という体たらくだった。

大島へは空路で行くことにし、調布飛行場から双発のプロペラ機で飛んだ。
曲がりなりにも「離島」へ行くわけで、出発前夜に荷造りをしながら思わずパスポートを探しちゃう(←バカ)ほど軽く緊張していたのだが、朝、家族4人で自転車で出発して10分、ターミナル前に駐輪してチェックインし、飛行機は9人乗りのアイランダーで、機内は旅客機というよりもほとんどワゴンタクシーのごときであって、手を伸ばせば操縦席に届くようなシートに長女をひざに乗せて座り、30分そこそこで大島に着いてしまって、なんとも距離感を裏切られる新鮮な体験であった。調布-北京便というのを飛ばしてくれるとたいへん有難いのだが。

アイランダーがまた、時速100kmちょっとで浮き上がっちゃうし、調布の市街地の上空は高度200mくらいで通過してゆくし、安定飛行に入ってからも時速200kmそこそこで、なんかこういかにも「飛んでる!」という実感に満ちた飛行だった。なぜこんなに数字を把握しているかは聞かないでくれ。窓から見下ろす風景は、見慣れたグーグルアースそのままだった(星空がプラネタリウムに見える的倒錯)。長男はかつてないほど大興奮し、飛行中ずっと、窓から何が見えるかを大声でレポートし続けた。同乗されていた出張ビジネスマン風のお二人、ご迷惑をおかけしました。

大島空港はさすがにANAのカウンターがあったりして、調布飛行場のバスの待合室みたいなターミナルに比べると少しは「空港」の体裁をしていたが、車寄せにはタクシーなんか1台も停まっていなくて、僕らが予約したレンタカーがぽつんと待っていた。傍に佇んでいたレンタカー屋のスタッフがその場で手続きをしてくれていわく「返却は、キーをつけたまんまそこの駐車場に停めておいてもらえればいいですから」。

そういうわけで我々は、記載情報が少なすぎて現在地を確認するくらいしか役に立たないカーナビのついたヴィッツを駆って、リス園で小動物に囲まれ、外輪山からカルデラを見、「地層断面前」というデイリーポータルZのネタみたいな名前のバス停で記念撮影し、黒い砂の浜辺で夕日を眺め、動物園でロバに餌をやり、火山岩の砂漠を歩き、ツバキ城の写真を撮影し、町営牧場でソフトクリームを食べ、都立で町営で一泊2000円の宿泊施設に2泊した。島に限らず田舎ではしばしばそうなのだが、「車輌による移動」のためのインフラの建設が徹底しているため、その意味できわめてバリアフリーになっていて、幼児を伴った観光旅行が実に楽だった。

野生のヤブツバキが密生する風景はやはり、ちょっとした見ものである。漁村のすぐ背後からいきなり斜面を覆って這い登ってゆく、絵に描いたみたいな照葉樹林の濃さ。そのわりには森林限界が低くて、三原山へ上る道路を走ると急に高木がすっぱり消えて、たかだか700mの山なのに、富士山の8合目みたいな様子になる。島嶼の植生だ。ハワイのビッグアイランドがこんな感じだったな。

まあしかし、オフシーズンの大島はじつに静かであった。ガイドブックに載っていた「みどころ」スポットですら、僕ら以外の観光客をほとんど見かけなかった。僕が身をおいた最も人口密度が高かった空間は、民家再訪プロジェクトのメンバーが民宿の離れに集合して行われていた、調査作戦会議の席だった。なんか、全体的に「売りが地味」というか、欲望喚起熱意が希薄な、ゆるい観光地だった。気候も温暖で湿潤だし、「スロー系」にはうってつけだと思われる。いやむろん、統計を見るに、実際に激減する観光客や島の人口そのものは、洒落にならない深刻さであるようであって、つまり伊達や酔狂で「スロー」なわけではないようだ。ツバキ開花の季節は混雑するというから、その時期に来れば印象は違うのかもしれないが。

今回のような立場で眺めると、コンビニやファストフード店をまったく見かけない街並みもむしろ気持ちいいし、空港へのアプローチ道路に植えられたワシントンヤシなんか、やめておけばいいのに、なんて思ってしまうが、仮に、「島の活性化」などというミッションの仕事を手伝ったりしたら、正直に言って困惑するだろうなあ、と思う。中身を知るほどに発言に窮するようになっちゃうんだよな。減風景問題は。

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コメント

大島、僕も2年ほど前、仕事で行きました(やはり家族と一緒に)。
脱力系(景)のなかなかいいところだなぁと思いましたが、
最近、個人的にイイなぁと思うところは、
たいてい経済的にはマズイことになっている。
逆に、いま絶好調!というところは、行ってみると、
あんまり面白くない(ことが多い)。ムズカシイですね。

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