2007年9月25日

クズどもへの接しかた

先々週。木曜日。
あるフリーペーパーの企画にて、フリックスタジオの高木さんが職場へ来られ、打ち合わせた。かつて「お蔵入り」にした、ばかなアイデアをいくつも披露しているうちに、久しぶりに地表系熱が出てきて、うーむ、そろそろまたどっかのDegree Confluenceへ行くとか、しないといけないような気分になった。

先週の連休明けの火曜日。
テレデザインに集合して、本年度の「デザインスタジオ2」の打ち合わせ。

木曜日。
田中さん、久原さんらが、tEnt(tEnt - new creation for calculation & motion -)として、展示会に出展するプロジェクトについて、相談に来られた(僕は別に何をしたわけではなく、デモを拝見して、好きなことを無駄に喋っただけ)。

金曜日。
事実上、世界(の少なくともある重要な側面)を牽引するギーク集団の一人は「情報が重層するプラットフォーム」だと言い、私たちグラウンディストは「世界への接近のツール」だと言う、地図全開の場に居合わせた。なんという思わせぶりな文でしょう。来月早々にあらためて掲示する予定。45億年で、まだベータ版?

週末。
連休が続いたために平日が圧縮され、溢れちゃった平日用業務を持ち帰る羽目になった。それほどせっぱ詰まった作業でもなかったので、週末大工はお休みにすることにし、持ち帰ったパソコンを広げてゆっくり仕事。していたのだが、この秋の風と日差しに我慢できなくなって、つい外へ出て、自宅外部の生態的撹乱を開始。

わが家の敷地は、ちょっとした空き地を挟んで、公園と接している。境界沿いに、クヌギ/コナラ系の、いかにも「雑木」という感じの木立がある。そのまま崖線へつながってゆく、良い感じの雑木林なのだが、公園の外周フェンスを手がかりに蔓植物が繁茂して、マント群落が形成されつつある。それはそれで「自然」であるし、地面にヒメムカシヨモギらの帰化植物たちがはびこっているのも「現代の里山」だし「都市の植生」ではある。と、引っ越してからしばらく、様子を眺めて考えていたのだが、やはり、思いきり人為的に介入して、見た目優先の都合の良い植生へ改造することに決めた。名付けて、「都市の『自然』は、牧歌的でノスタルジックな里山風景を良きものとして称揚する旧弊な『自然観』では発見できない、ただしNot In My Backyard」作戦。略称「深大寺NIMBY」。

方針:
・クズやヤブカラシは、場合によっては化学薬品を使ってでも根絶やしにする。鬱陶しいので。
・実生しているケヤキやコナラの苗は残し、アズマネザサなどの「薮」は刈り払って、わが家の視界から後退させる。
・いかにも帰化植物という様子の雑草(ヒメムカシヨモギ、アレチノギクなど)は除去。でもルドベキアの群落を作ったりする。
・ハナニラ、スイセンなどの球根を植える。クズ除去後、フェンスにはツルアジサイを絡ませてもよい。
・ススキ、チガヤなどの宿根草を導入。その手前には、トールフェスクなど、常緑の芝生の種を蒔く。
・雑木に混ぜて、モミジやサクラなどの幼苗を植えておいてもいいな。

うむ。抑制の効いた、いい「自然」になりそうだ。

編集部から10+1が届いた。忽那さんへのインタビューをネタにもらったため、1冊贈呈してほしい旨メールしたら、編集部からの返信に、次の締め切りのスケジュールがさりげなく書かれていて、これからしばらくこんなふうに、締め切りストレスにずっと晒された生活を送るのであろうか、と、今更のように愕然とした。。。

上記と関連した懸案事項がいくつか存在するのだが、今週は明日からジャカルタへ出張せねばならぬ。せらまっ・てぃんがーる。

追記:

懸案事項とは、
1.シンスケ(またはオルスケ)関連も巻き込んだ「圏外風景(旧・悪い景観)」の集いを、できれば次回の連載のネタとしても。
2.世界を牽引するギーク集団の一部をしても膝を乗り出さしめた「地図ナイト2」
3.東風山内さんとの間で持ち上がった「ランスケマップ」
などである。

いやむろん、瀝青会はお手伝いを続けます。>早稲田レーニンゼミ方面。

2007年9月13日

Go on Asphalt

以下、イベントのお知らせです。

歴史工学家・中谷礼仁氏、ランドスケープデザイン・石川初氏、建築史・清水重敦氏、同・御船達雄氏、写真家・大高隆氏を中心に、各分野の研究者が集まった「瀝青会」は、1年前より今和次郎『日本の民家』の調査地再訪を目的として活動を続けています。 これまでの研究成果と調査経緯は『10+1』No.43─48(連載中)「『日本の民家』再訪」、10+1 web site「BLOG・再訪『日本の民家』」http://tenplusone.inax.co.jp/project/kon/でお読みいただけます。

調査の旅は現在も続いていますが、再訪予定地のおよそ1/2を巡ったいま、ゲストを招いてのトーク+写真家・大高隆氏による写真(未発表含む)公開イヴェントを行ないます。

ご興味のある皆さまは、下記要領にてお申し込みのうえ是非お越しください。



■テーマ:今和次郎『日本の民家』再訪/民俗誌と写真
■開催日:2007年9月18日(火)19:00〜(21:00予定)
■場 所:東京・京橋INAX:GINZA 7階クリエイティブスペース(地図をご参照ください)
※ 近くに駐車場がございませんので、公共機関をご利用ください。
■出演者[敬称略]:
 - 田中純(表象文化論、東京大学准教授、『都市の詩学』近刊)
 - 菊地暁(民俗学、京都大学准教授、主著『柳田国男と民俗学の近代 >
 - 中谷礼仁(歴史工学家、瀝青会メンバー、早稲田大学准教授)
 - 大高隆(写真家、瀝青会メンバー)

■お申し込み方法
お名前、ご所属、ご連絡先をお書き添えのうえ、「info@tenplusone.inax.co.jp」までメールにてお申し込みください。



プログラム(予定)

□1部
基調講演:中谷礼仁「瀝青会の射程、日本の民家、日本人の住まい」
特別講演:田中純「写真という方法、宮本常一」
特別講演:菊地暁「民俗写真の系譜学、写真を読む力」
□2部
中谷×田中×菊地×大高:ディスカッション+写真公開「写真、民俗学、フィールド・ワーク」

[これまでに再訪した調査地]
神奈川県旧内郷村/埼玉県旧大間木村/東京都・甲州街道/徳島県旧日和佐町/徳島県石井町/徳島県旧三縄村/徳島県旧西祖谷山村/愛媛県松山市/高知県南国市/高知県上川口/奈良県生駒山/和歌山県紀ノ川/東京都伊豆大島など



じつに残念なことに、僕は先約があって行けません。
誰かぜひ行ってくれ。レポート求む。

2007年9月12日

(無題)

もしかして、「樅の木は残った」の原田甲斐だったんじゃないだろうな。総理。

大島行きのスローフライト

先週末から今週にかけて、伊豆大島へ旅行。

本来、この企画は「今和次郎『日本の民家』再訪プロジェクト」の一環として進行中の、伊豆大島への調査旅行をお手伝いするついでに、長男の誕生日イベント家族旅行、という趣旨だったのだが、結局、時間配分的に逆になり、家族旅行のついでに調査にちょこっと合流して一瞬だけ手伝ってすぐ離脱、という体たらくだった。

大島へは空路で行くことにし、調布飛行場から双発のプロペラ機で飛んだ。
曲がりなりにも「離島」へ行くわけで、出発前夜に荷造りをしながら思わずパスポートを探しちゃう(←バカ)ほど軽く緊張していたのだが、朝、家族4人で自転車で出発して10分、ターミナル前に駐輪してチェックインし、飛行機は9人乗りのアイランダーで、機内は旅客機というよりもほとんどワゴンタクシーのごときであって、手を伸ばせば操縦席に届くようなシートに長女をひざに乗せて座り、30分そこそこで大島に着いてしまって、なんとも距離感を裏切られる新鮮な体験であった。調布-北京便というのを飛ばしてくれるとたいへん有難いのだが。

アイランダーがまた、時速100kmちょっとで浮き上がっちゃうし、調布の市街地の上空は高度200mくらいで通過してゆくし、安定飛行に入ってからも時速200kmそこそこで、なんかこういかにも「飛んでる!」という実感に満ちた飛行だった。なぜこんなに数字を把握しているかは聞かないでくれ。窓から見下ろす風景は、見慣れたグーグルアースそのままだった(星空がプラネタリウムに見える的倒錯)。長男はかつてないほど大興奮し、飛行中ずっと、窓から何が見えるかを大声でレポートし続けた。同乗されていた出張ビジネスマン風のお二人、ご迷惑をおかけしました。

大島空港はさすがにANAのカウンターがあったりして、調布飛行場のバスの待合室みたいなターミナルに比べると少しは「空港」の体裁をしていたが、車寄せにはタクシーなんか1台も停まっていなくて、僕らが予約したレンタカーがぽつんと待っていた。傍に佇んでいたレンタカー屋のスタッフがその場で手続きをしてくれていわく「返却は、キーをつけたまんまそこの駐車場に停めておいてもらえればいいですから」。

そういうわけで我々は、記載情報が少なすぎて現在地を確認するくらいしか役に立たないカーナビのついたヴィッツを駆って、リス園で小動物に囲まれ、外輪山からカルデラを見、「地層断面前」というデイリーポータルZのネタみたいな名前のバス停で記念撮影し、黒い砂の浜辺で夕日を眺め、動物園でロバに餌をやり、火山岩の砂漠を歩き、ツバキ城の写真を撮影し、町営牧場でソフトクリームを食べ、都立で町営で一泊2000円の宿泊施設に2泊した。島に限らず田舎ではしばしばそうなのだが、「車輌による移動」のためのインフラの建設が徹底しているため、その意味できわめてバリアフリーになっていて、幼児を伴った観光旅行が実に楽だった。

野生のヤブツバキが密生する風景はやはり、ちょっとした見ものである。漁村のすぐ背後からいきなり斜面を覆って這い登ってゆく、絵に描いたみたいな照葉樹林の濃さ。そのわりには森林限界が低くて、三原山へ上る道路を走ると急に高木がすっぱり消えて、たかだか700mの山なのに、富士山の8合目みたいな様子になる。島嶼の植生だ。ハワイのビッグアイランドがこんな感じだったな。

まあしかし、オフシーズンの大島はじつに静かであった。ガイドブックに載っていた「みどころ」スポットですら、僕ら以外の観光客をほとんど見かけなかった。僕が身をおいた最も人口密度が高かった空間は、民家再訪プロジェクトのメンバーが民宿の離れに集合して行われていた、調査作戦会議の席だった。なんか、全体的に「売りが地味」というか、欲望喚起熱意が希薄な、ゆるい観光地だった。気候も温暖で湿潤だし、「スロー系」にはうってつけだと思われる。いやむろん、統計を見るに、実際に激減する観光客や島の人口そのものは、洒落にならない深刻さであるようであって、つまり伊達や酔狂で「スロー」なわけではないようだ。ツバキ開花の季節は混雑するというから、その時期に来れば印象は違うのかもしれないが。

今回のような立場で眺めると、コンビニやファストフード店をまったく見かけない街並みもむしろ気持ちいいし、空港へのアプローチ道路に植えられたワシントンヤシなんか、やめておけばいいのに、なんて思ってしまうが、仮に、「島の活性化」などというミッションの仕事を手伝ったりしたら、正直に言って困惑するだろうなあ、と思う。中身を知るほどに発言に窮するようになっちゃうんだよな。減風景問題は。