2007年5月 3日

地域のプロモーション

「住宅都市整理公団」別棟:不動産コピー

僕は、この「プラネット」のやつなんか、興味をそそられるな。

「住宅都市整理公団」別棟:THE TOWERS DAIBA

PLANET DAIBA
その惑星に住める日がくる。
美しくも猥雑、夢のようで、とてもリアル。都心と絶妙の距離を保ちながら「惑星」のような輝きを放つ特別なエリア、港区台場。
まるでフィクションのようなこの地を、私たちは「プラネット」と呼ぶことにした。
ビーチ。カフェ。シアター。スパ。ショッピングにフィッシングまで。
想像の中にしかなかったリゾートライフを、いとも簡単に日常にしてしまうタフな場所。
この「惑星」にそびえ立つ33階建て超高層ツインタワーから、誰も知りえなかった暮らしがはじまる。

「惑星」である。リモートな場所にあって、自分では発光できないけれども輝きはする。非日常と日常とが離れ業的に接続されるという。なんというか、この工夫。

お台場周辺が作り物めいているのは、いかんともし難い。埋め立て地の開発は、良くも悪くも「にわか都市」である。商業施設のキャッチコピーならば、それはそれでもっと開けっぴろげに「急に出現した新しい街」を押せるだろうが、モノが住宅、特に分譲マンションだと、いささか歯切れが悪くなる。純粋な投資目的ででもない限り、購入者はある程度腰を据えて、テーマパークやショッピングモールの広告よりもずっと切実に、その土地と付き合う羽目になる。そのような目でその街を眺めたときに向き合うことになる、ショッピング的フィクションに押し込めきれない、ベタな生活の「日常」や、その土地の「現実」の有様を、どのように美しく言い回すか、に、コピーライターが努力を傾けるわけだ。

だから、マンションの広告を、一種の「地域のプロモーション」として見てみると、それはそれで興味深いのである。ちょっとばかばかしいものも含めて、それらの「言い回しの切実さ」は、大袈裟に言えば「その土地の独自性はその土地に住む人のアイデンティティに関わる」ということを示しているようにも見え、景観/風景について考えるヒントのひとつにもなりうると思うのだ。

僕の手元にあった広告雑誌のいくつかから拾ってみると、

地名を立てて、真っ向からストレート勝負しているもの:
・高輪の、深みに住まう。(東京都港区高輪)
・市ヶ谷、邸の景。(東京都新宿区市ヶ谷中ノ町)
・成城の高嶺。(東京都世田谷区成城)
既知の地域特性が「より一層純化されている」という押し方だ。

少し説明的な言葉が入るもの:
・文の都、本郷。その静謐に触れる。(東京都文京区本郷)
・東京の中枢、港区虎ノ門に生まれる超高層。(東京都港区虎ノ門)

地域の現状に完全には期待せず、むしろこの物件が地域を良くする、とうたうもの:
・とっておきの豊洲、はじまる。(東京都江東区豊洲)
・池袋が変わる。(東京都豊島区東池袋)
ただし、上記の池袋物件のキャッチにくっついている英語は「IKEBUKURO CHANGES Your Life」となっていて、それだと「池袋があなたの生活を変えます(住んでしまえばあなたも池袋色に染まります)」という意味に読めるけど。

「この地域の良さは、わかる人にはわかる」というノリの、開き直り気味のもの:
・船橋プレステージ・タワーライフ。(千葉県船橋市本町)
・それは、時を越えて甦る海神伝説。(千葉県船橋市海神)
・川口に誇らしく。(埼玉県川口市幸町)
・鶴川。こだわれば、この地に。(東京都町田市能ケ谷町)
・府中・芯・生活。(東京都府中市府中町)
川口の物件など、なんか住む人を励ましているような響き。

環境の良好さで押しているもの:
・荻窪二丁目、静閑の美景とともに。(東京都杉並区荻窪)
・閑静な丘の住まいならではの心地よさが、陽光の中で広がる。(千葉県船橋市前原)
・この街の静けさは、あたたかい。(東京都足立区綾瀬)
・深く住む。(東京都渋谷区南平台町)

利便性のみで押しているもの:
・STATION STYLE RESIDENCE 志木駅4分(埼玉県志木市幸町)
・駅へ3分。目黒へ3分。(東京都品川区小山)
・駅前にそびえる59階。(神奈川県川崎市中原区新丸子東)

「広域」の地名にシフトしちゃったもの:
・東京はこんな暮らしを待っていた(東京都東村山市野口町)
・東京粋都 TOKYO SUITE(東京都江東区北砂)
・深く美しい東京へ(東京都調布市深大寺南町)

内側を向いて、施設の質にフォーカスしたもの:
・暮らしが華やぐ、洗練を纏う住空間(東京都大田区仲池上)
・花鳥風月の情緒を採り入れたパブリックスペース。(東京都世田谷区梅丘)
・レジデンスはいま、次世代の上質を語りはじめた。(千葉県松戸市紙敷)

「生活スタイルのイメージ」に抽象化したもの:
・よくばりな生活(東京都墨田区江東橋)
・Sence of LIFE(千葉県柏市南柏)
・すべては、美しい人生のために。(東京都板橋区加賀)
・この街にはじめてお届けする”生活ブランド”(東京都日野市多摩平)
・「ゆとり」と暮らす、未来へ。(神奈川県相模原市下九沢字中段)

地面と決別したケース:
・ひばりが空。(東京都西東京市住吉町)

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コメント

そんなのばっかし、316物件設計してます・・・早くやめたい。

わかります。僕はさすがに300物件はないけど。

でも、僕はなんか、けっこうこれはこれで楽しく仕事しちゃうんだよな。

JR、私鉄、地下鉄が乗り入れて交通の要になっている池袋。大規模商業施設も充実していて、少し歩けば自然と親しめる公園も沢山。
そんな池袋の情報を掲載しています。是非一度のぞいてみて下さい。

・・・ばかなスパムだな。逆効果だと思うが。

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