2007年2月19日

立面問題、平面問題、断面問題

そこで、その標準プランを件のOM氏の事務所に持ち込んで、見てみてくださいとお願いしたわけだった。

ら、OM氏がちょいとトレペ乗せて描いてくれた「たとえば」プランが、目からウロコ、というほどではないにせよ、「それなりに何とかすれば、それはそれで気に入った建物になるんじゃないか」という期待と希望を持つに充分な改良案であったのだ。建築ってすごい。ちょっと気を取り直した。限られた時間のなかでだが、すこし内容をいじってみようと。
以下のようなルールで。

1.セット売りの「ベーシックプラン」が示す最低限の価格を変えない。これを選んだ理由が「安価なこと」なのだから、信条としても、実利的な意味としても、可能な限り安く押さえることがこのプロジェクトのミッションである。

2.意匠を排除する。依頼しかけたアトリエを始め、真摯に住宅を設計している建築家諸姉諸兄へのリスペクトとしても、ともかくいろんな意味で「デザインされたもの」にしたくない。新規造成ミニ開発住宅地のなかで、ストイックにプレーンな建物にするのは、それはそれでメタ意匠じゃないかという議論もありうるが、そこは勘弁してもらう(←誰にだ)ということで。

上記、結果から言うと、1については、「オプション・メニュー」絶無、というわけにはいかなかったものの、見込んでいた諸経費から出た、想定外の減額項目とほぼ相殺する値段には収まった。

2については、これは思ったよりもずっと困難だった。

ひとつは、インターフェースというか、「表層」の問題である。

「標準」仕様にもメニューがあって、外壁の仕上げやサッシの色から屋内の壁天井のクロスまで、デフォルトの「標準仕様」の範囲でもいくつかの種類を選べるようになっている。用意されているのはいかにも一般的で、おそらく、間違いのない素材で、かつ多く流通しているのだろう素材やパーツである。この「いかにも一般的」というところが、実にくせ者なのだ。「いかにも一般的」な素材やパーツは実はどれもこれも、すでに強い「意匠性」が貼り付いている。こう言ってはなんだが、100円ショップで売っている食器や文房具がすべからく「柄もの」や「キャラもの」だったりするのに似ている。サイディングはどれもこれも石やレンガを「模した」模様だし、ユニットバスには大理石模様の「化粧パネル」がついている。ほとんどあらゆる「カラー」は、「白」という選択肢がなくて「アイボリー」である。大量生産型の製品に、わざわざ特定の表情を付してあるのは、いったいなぜなんだ。そういうのが「受ける」デザインなのか?

そこで、あえてそうした表情を消そうとするほうがエネルギーを使う、という逆転が起きてしまう。下手をすると逆に値段が上がったりする。「いっそ、いかにもそのへんに沢山ありそうな色と柄で埋めたほうが、意匠を排除したことになるんじゃないだろうか」という悪魔のささやきをなんとか払拭し、可能な限りの範囲で、彩度が低く、明度が高い選択をしてみたが、それぞれ微妙に色合いが異なるため、合わせてみると、それはそれで何とも言えない、無印良品やユニクロが持っているような、ある種の「微熱的意匠性」を醸し出してしまう。

建具がまた、難儀なのだった。ドアや靴入れや手すりやら、そういう内装建具は、フローリングの色を決めると同時にすべてその色で統一されたセットになる、というルールになっている。モノは大手建材メーカーの製品である。色合いはまた、標準色のなかから選ぶことができるんだけど、今回つくづく思ったが、この「フローリング」というパーツ自体がすでに、どうしようもなくある種の意匠性(というか、抜き難い雰囲気)をまとっているのだ。どの色を選んでも、マンションのモデルルームじみた光景になる。「缶コーヒー」じゃないけど、「フローリング」はすでに、「板張りの床」ともビニールシートとかとも異なる、独自の範疇をなしている。

こうした、いわば「立面的問題」よりも深刻に、あらためて考えさせられたのが「平面的問題」であった。

「参考プラン(事実上のデフォルトプラン)」には、「LD」「BR」というふうに、それぞれの部屋に「名前」がついている。まあそれは普通、そういうものだ。チラシ広告で見かけるマンションや建て売りのプランはすべてそうであって、普段はそれ自体をあまり問題視したりしない。でもこれが「わが事」になって、あらためて切実にその標準プランを眺めるに、ふつふつと疑問が湧いてくるわけである。いったいいつ、誰が決めたんだこういうの。

いったん、そこに疑問を抱き始めるともうアウトである。僕らは夫婦とも仕事の専門が造園系なので、つい庭を考えの中心に据えるという「奇癖」がある。庭のこの部分をこういう風にしたい、そのとき、そこに接する屋内はこんな風であってほしい、というような。そのように夢想した「屋内」のその場所は、「リビング」とか「ダイニング」とかいう「部屋の名前」が示す範疇と、なんともズレている。

僕らがそういうふうに眠る必要があるから「BR」という「仕切られた一角」を設けざるを得ないのか、それともなんとなく「BR」があるからそこにベッドを置いて寝るという行為を知らず強いられているのか。その標準プランは、僕らが住宅産業的に共有された常識的行為で日常を送ると仮定するならば、とてもよく配置された、それなりに手慣れた感じさえ受ける「間取り」なのだったが、そもそもそれを「合理的」で「快適」だと思う、そのゲームから降りてしまうと、その平面図それ自体がなんだか奇妙なものに見えてくる。

もっとも、そういう「ルール」に不必要に批判的なまなざしを向けつつ、平面図とにらめっこをするのは、自分たちの日常の生活行為を見直して読み替えるというような、頭の体操にはなるのだった。
見直せば見直すほど、壁や建具が減ってゆく。そうなると、平面をより簡素にするのが面白くなってくる。ひとつには、僕自身が素人木工が好きで土曜大工を厭わないため、不確定だったり変化が見込まれるものについては「あとで自分で作るから、本体工事としては要らない」と簡単に決めちゃう、ということがあるのだが。

ただし、用意された「遊びしろ」はやはり限られている。お風呂も台所も玄関もトイレも窓も収納も、そうした「ブロック」として設定されている。それらを再解釈したりする余地はあんまりなくて、その「組み合わせ」をいろいろにやってみるだけである。

それから、構造や設備にかかわる「断面的問題」がある。

トータルに考えられている住宅プロジェクトの場合は、意匠と構造と機能は分かちがたく結びついていて、そう切り分けることがそもそも難しいが、今回のような住宅の場合は、前述のごとく、平面的機能が「名前のついたカタマリ」として部品化されているし、立面的意匠は基本的に「色と柄」のことである。そこで、ここでは「構造」はそれらをひとつの「大きなカタマリ」にするためのエンジニアリングのことであって、僕らがあまりどうのこうの言う余地はあまりない。「結果」のメニューを選択するだけである。

キックオフからわずか1ヶ月と少し。まだ遂行すべき諸手続きは山のようにあるんだけど、住宅の建設に必要な「打ち合わせ」が終わってしまうと、なんだか気が抜けてしまった。

これから、建物は驚くべき短期間で竣工してしまう。

ああ。フィード購読しまくってる、若手建築家のブログ群なんか、もう見たくない。

ま、僕の性格からして、いったん目の前に出来てしまえば、今度はそれに愛情と情熱を注ぐだろうとは思われる。
庭がカタチをあらわすのは1年後とかかもしれないが、その折にはバーベキューでも催すので、声をかけた際にはぜひ、お立ちよりください>各位。

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コメント

床も自作しちゃえばいいのに。
建築学科の授業でも多くの学生は「部屋」を並べた間取り図を最初は持ってきますね。

いやほんと、床も自作したかった。。「外の床」はどのみち自作なので、併せるとちょっと負担が。

しかし、「間取り図」から抜け出るというのは、けっこうな跳躍だよなあ。とつくづく思いましたよ。今回。

早いですね~・・!!
庭が完成するであろう1年後のバーベキューには
是が非でもはせ参じたく 心待ち~にいたしておりますので
必ずやご一報下さい・・這ってでも行きます。
星座型居住をテーマに建築を再開し始めましたので
石川さんの建築行為をとても興味深く感じておりました

間取りから解放され暗黒の宇宙と地続きになってしまう
あの時 ゲラゲラ嬌笑せずには居られない
動物としての茫漠とした不安を通過すると
なにをしても もう快感しか残りませんですよね・・

白じゃないアイボリー
無地じゃない微妙柄
あー、わかります。わかります。
カタログの一番前(高い)か後(ド定番)しかない。
マイ団地リノベの際は後者のみで突っ走りました。

佐藤師匠。ぜひおいでください。「1000万家」じゃなくて、細長いだけの「1ハウス」になっちゃいました。


「ド定番のみ」でどーやって部屋のど真ん中に透明風呂ができるんですかっ(←定番の突っ込み)>団地住民

有志を集めて「床作りワークショップ」を開くとか。
床は建築の中で「体に触れている」時間が圧倒的に長い部位なんですよねー。目に触れる時間は壁や建具のほうが長そうだけど。

都市で直に接している素材が「アスコン」だっていう事情とおんなじですね。

有志を集めてむしろ「庭作りワークショップ」したいよ。

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