・the year of the pork
新春うございます。>各方面
お陰様で、とてもここに数え上げることなど不可能なほど、豊かに幸多き1年でした。
今年もまたよろしくお願いいたします。
皆様にも、よき1年でありますように。
こちらは、石川初(いしかわはじめ)のweblogです。
2007年1月 1日
新春うございます。>各方面
お陰様で、とてもここに数え上げることなど不可能なほど、豊かに幸多き1年でした。
今年もまたよろしくお願いいたします。
皆様にも、よき1年でありますように。
GPSをめぐって、初めて印刷媒体の記事になった「日経ゼロワン」のインタビュー取材を受けたとき、ライターの方に「デジタル機器としてのGPSの魅力って何ですか」と尋ねられ、咄嗟に「ザラザラしてるところです」と答えた。なんとも舌足らずの言い方だ。
それ以来、それ以上うまく言えなかったこの「GPSのザラザラ感」をうまく伝えられないもどかしさをずっと抱えてきたのだが、最近、「グラウンディング」のメンツの一人の田中浩也さんによって書かれた、膝を打つような、目から不透明なウロコがぼろぼろ落ちるごとき論文を送って頂いたので、紹介したい。というか読んでくれ。みんな。
掲載論文のPDFはこちら。「モバイラビリティと生成的表現 -描く手段としての/歩く契機としての-」
引っ越すことにした。
ここ数年、家族の増加に伴い、現在の借家が面積的に限界を超えつつあったことと、積極的に探し続けていたわけではなかったものの、たまたま散歩の途中で、ここなら借金しても住んでも良いかもしれない、と思わせる立地と地形・環境の宅地を見つけた、というのがきっかけで。
敷地は、武蔵野台地の縁、国分寺崖線が深大寺付近で谷状に入り込んだところに形成されている半島状の台地上。そこに、新規に造成した道路に旗竿敷地が鈴なりに配置された、絵に描いたみたいな「ミニ開発」がなされている。販売上は「建て売り」ではないが、事実上「建築条件付き」のような売り方で、土地だけ購入すると値段がけっこう高くなる。
でも我々のポリシーとして「建て売り」は埒外であった。土地買いをする線でプロジェクトを進めた。資金計画を組み立てる(こんな事態はまだ数年先のこととして生活していたので)一方で、家屋はプロの設計者を雇うことにした。土地に想定以上のお金をかけることになっちゃったので、建物は「奇跡のローコスト」仕様にせざるを得ない。そんな条件もポジティブに引き受けてくれそうな設計者で、できればおおむね同世代で、なるべくなら友人として親しすぎない程度(このへんの頃合いは難しいが、あまり知り合いだと施主としてクールに振る舞えなくなりそうなので。)の建築家が望ましい。
というわけで、とある設計事務所に、試しにメールしてみたところ、快諾の返事をもらい、最初の「お見合い的打合せ」に、事務所を訪問した。
自宅を兼ねたその事務所の建物も、一見わりと地味にぬっと建ってるわりに、一旦中へ入ると周囲の街の隙間や地形が建物に様々に入り込んで場所を作ってるみたいな、非常に面白い建築なのだった。打合せも、初回にしてすでにとても刺激的で面白く、今後も別な場面で使えそうなネタが頻出した。これは建てること自体が楽しみなことになりそーだと確信して帰宅。
打合せの結果を加えて、再度、資金計画の練り直し。中・長期的な収入の見込みに対して、プロジェクトの総予算を、当初、ハイになって考えていたときに取りこぼした様々な経費を加えて、あらためて概観するに、楽観的に見積もっても、どのファイナンシャルプランナーに相談しても「悪い事例」としてあとで使われそうな、「無謀」とスタンプが押してあるような内容であることが、いよいよ鮮明になった。いや、それでも、享受する生活環境は何者にも代え難い、と家族会議体で話し合う。
「P資金」(抜き差しならない事態になった際に頼ろうと思っていたボリューム)を引き出すべく、実家へ。ところが、P資金が期待薄であり、かつ、遠くない将来の、2世代の共同プロジェクトの構想を示唆された。そうなると、今回、不動産を入手しても、いずれ売却してしまう可能性が出てくる。
衝撃のプロジェクト変更。
ここで、セヴェラルな選択肢は、
1,そのまま、将来のことは考えないようにして、不足分もぜんぶ借入金に計上して進む。期間限定でも、不安定な経済状態でローン返済に耐えてでも、「良質な住風景と住環境」を享受する。
2,「建築」をあきらめる。「住み替え」を見据えつつ、建物を宅地開発業者のデフォルト仕様にして、全体コストを抑えて住む。この場合、土地の価格も下がるため、コストの削減幅は劇的である(返済期間にして10年単位の差になる)。今回、じつに「建て売り」がなぜあるのか、という事情を思い知る羽目になった。「P資金プロジェクト」発動の時期に、この土地の「売れそうな値段」と「残った借金」がバランスする程度に返済が進んでいれば成立する。
3,もう少し広い庭付きの借家へ移る。ただ、複数の不動産屋に問い合わせたが、家賃の相場からして、上記「2」の場合のローン返済額と住居費はさほど変わらない。加えて、賃貸の場合「立地と環境」の選択の幅は限られる。
4,プロジェクト中止。「P資金構想」の実現まで、現在の狭小住居状態を維持。
どーするか。
「庭環境」的には抜群のサイト。しかし、住居部分を、夢想した水準にしようとすると経済的なキャパを越える。
数日間に渡る、ほとんど口論みたいな会議のすえ、今後に備えたリソースの保全、家庭経営学的な危険水準の予想、転売の可能性の担保などを鑑みて、家族会議体として「2」を選択。
結局、「住宅建築には目をつぶって、立地と外部環境を買う」という趣旨になった。「庭に浮気した」のだ。「いずれ売るつもり」でアトリエ住宅を建てるのはもったいないし。
各方面にその旨連絡し、くだんの建築家には「次回にぜひリターンマッチを」とお願いした。
・・・そんなわけで。あれほど、「真に景観を破壊しているのは安直な建て売り住宅地開発だ」などと放言し、自宅の建設を予定している友人には「多少高くなっても建築家を雇え」と勧めたりしておいて、何という体たらくだ。全国各地で頑張って住宅を「建築」している建築家の皆様に、まことに申し訳ない。せめて、デコレーションを全て排除し、可能な限りのストイックな「建て売りのさらにローコスト」な家屋になる予定であるので、ご勘弁いただきたい(←誰にご勘弁いただくのだ)。しばらくの間だけだからさ。
OM氏によれば、この期に及んでは僕が何言っても「言い訳に聞こえる」そうなのだが、以下、あらためて学んだこと:
・我々はそんな自覚はなかったのだが、調布というのは何だかんだ言って世田谷区に隣接していたりし、都心のあおりを食らってけっこう地価が高い。
・さすがにその値段だけのことはあって、デフォルトの家屋の仕様というのは(いろんな意味で)すごい。工期も、信じがたいような短期間である。いちおう、外壁の仕上げやら、床の色合いやら選べる「メニュー」があるが、こちらが下手に目が肥えているものだから、なんかこう、愕然としてしまう。マンションのモデルルームと同じ匂いがする。いわゆる「住宅建築」とは、別なカテゴリーの「何か」である。
・デフォルトの間取り図を、OM氏の事務所へ相談に持ち込んだら、これくらいなら「間取り変更」の範囲でできるんじゃないか、という「改良案」をすらすらと描いてくれた。それだけでもプランがぜんぜん違って見える。ケンチクのチカラの片鱗を垣間見た。ちょっと。
厳密に言えば、上記、まだ完全に決定されたわけではない。これからの手続きで、銀行の審査でローンを断られたりする可能性も絶無ではないし。そのあたりが難なく進めば、夏には6年住んだ現住居を引き払って、崖線のそばへ引っ越しになる。その後しばらく僕は「庭の人」になるであろう。ふー。
いささか時間が経ってしまったが、
その1:
ISBN:4757213069
「Google Earthの歩き方」アスペクトムック、2006/10
これに、インタビュー記事が1ページ、掲載されています。
「コラム2:デジタルと融合した新しい地図の魅力に迫る(p36)」というタイトルで。
インタビューはなかなか楽しい1時間半で、例によって地図の話で盛り上がったのだが、本の企画については、まあ、以前によくあった「面白ウェブサイト紹介本」みたいな本でしかないんだろうなあと思っていたのだった。
書店に並んだ実物を拝見するに、やっぱりたしかに「世界遺産を巡る」とか「内外セレブのお宅訪問」とかそういう、Google EarthコミュニティBBSのダイジェスト版のような目次であって、ソフト自体の最近の更新にも追いついていないし、こういうデジタル生成物・共有物のメタ情報の印刷媒体の「短命」について思わざるを得ないような本である。
のだが、通勤電車のなかでページを繰りつつ、満載の世界の空撮写真を眺めるうちに、それなりの地表系感覚というか、「鳥虫問題」的刺激を味わえる本ではあった。担当の編集者の方との間で、「今後の構想」も浮上していたりもする。
その2:
CX_PAL Vol.70 (2006.10)
ソニーの半導体の事業部が出している技術者向けPR誌、という文字通りコアな雑誌の「ANGLE」というコーナーに、「つながる風景」と題してインタビュー記事が掲載されました。
むろん、ネタは同じ。インタビュアーが面白がってくれたので、これも楽しい取材のひとときでした。記事も素敵に良く書けていて、確認用の校正に「赤入れ」するところがなかった。
何より、自分が書かなくてもいい、というのは実にラクだ。来年早々また、締め切りの圧力に晒されることになっているんだけども、誰かインタビュー記事にしてくれないだろうか。その締め切りのある記事。