2006年5月 6日

North Faces

北海道へ行ってきた。家族で。

主な目的地は2箇所。ひとつは大学以来の友人とその夫人、および北海道犬一匹が在住する千歳。
イマイ家は千歳郊外の住宅地の外れにあって、ほとんど国有林の中に埋没しているような地所で、事前に調べたGoogleMapの衛星写真が目を疑うような画像で、住所を間違えたかと思って何度も確認してしまった。
実際に辿り着いてみると、もとはイタリア料理のシェフが住んでいた家を改装したその2階建ては、まるで旧軽井沢の別荘のごとき「森の家」であった。家の前には中古のランドローバー。玄関を入ると吹き抜けのリビングに薪ストーブ。窓の外には地平線まで続く落葉樹林。北海道で見る落葉樹林は、実にネイティブな樹林に見えるが、あとで調べると、そのあたりでも自然林はほとんど残存していないらしい。林床にササが優占するミズナラやシラカンバ林は二次林のようだ。しかしそれにしてもその広さというか、森林の「厚み」の風景は圧倒的である。ランドローバーで恵庭まで出て、イマイの勤め先の会社が経営するレストランで夕食をご馳走になり、またイマイ「森の家」邸に戻って、夜中まで「デザインとは何か」「良いものを作るとはどういうことか」みたいなコアな話に興じ、千歳のANAホテルへ引き返して宿泊。

翌日、モエレ沼公園に立ち寄って、レンタサイクルで公園をぐるぐる回ってから(外気温5度で強風という、真冬のような天候だった。寒かった)、次の目的地、日本海沿いの瀬棚へ、4時間のドライブ。道央自動車道は空いてるし、高速を降りても車は疎らだし信号はたまーにしか出現しないし、ほとんど走りっぱなしで、予想を上回る早さで着いてしまった。
瀬棚には、先月、牧場を購入して、伊那から引っ越してきて就農した実妹一家が住んでいる。谷間の斜面林(ニセアカシアの樹林だったけど)のなかに、家や牛舎が点在する、んもう絵に描いたみたいな「牧場!」という趣のクラタ農場で、牧草地の丘を登って海に沈む夕陽を眺めたり、無謀にも畑作りを少し手伝って筋肉痛になったり、さっき絞ったばかりの牛乳を飲んだり、夜に訪ねてきてくれた、近くで牧場を営む高校時代の後輩と、無農薬有機農業のビジネスから高校時代の思い出話まで、つもる雑談に興じたり、薪割ったりウシなでたりイヌと走ったり、これは毎年、夏休みに自分のコドモらを研修に寄越さないといかん、と決意したりして3泊。

いやじつに、120%、北海道を満喫した小旅行なのだった。

北海道は決して初めて行ったわけではなく、函館から利尻島までいちおうは訪れたことがある。しかし、久し振りに東京からいきなり北海道へ飛ぶと、あらためてその、なんというか、街も人も物も、人工物の密度の「疎ら」なことに驚く。とにかく、モノとモノとの距離がいちいち大きい。気候の制約があるために、建物をはじめとする構造物がどことなくストイックな様子をしていて、それがある種の風景の統一を見せている。みんな車で移動するため、路上にはほとんど人影がないが、スーパーやレストランの内部は驚くほど賑わっている。そのノリも様子も、アメリカの都市、特に中西部あたりの内陸の都市によく似てる。恵庭から札幌へ向かう高速道路沿いの風景なんか、日本語のサインさえ無ければ、「シカゴ(あるいはミネアポリス、あるいはセントルイス、あるいはクリーブランド)へ向かっている」と言われたらそのまま信じただろうと思われるくらい。北海道の近代のキックオフに関与した、農業系アメリカの遺伝子がなんとなく残っているんじゃないだろーか。

帰宅してから、そういえば締め切り迫る原稿が数本あったことを思い出す。いや、旅行にはちゃんとラップトップ持参していたのだが、なんか、結局あまり手が着かなかったのだ。だってさあ。。。

連休明け、というか日曜日の午後からまた中国へ出張だし、うう、やばいぞこれは。

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コメント

クラタ農場ができたのですか・・・感慨深いものがありますね。 皆さんお元気そうで何よりです。

石川が講評すると、拙宅も「一体どこのことだ?」といいたくなるくらい良いところに聞こえるね。えへ。いや、周辺環境のなせる業だっていうのは良くわかっているけどさ。

どうもこう、自分では、自分の住んでる家や場所をあまり良く言わないような気がするが(家族のことを誉めるように、ちょっと気恥ずかしくなってしまうのか?)好きで住んでいるところなので、もっともっと愛着を持って住み、「これこれこういういいところです」と、堂々と言えるようになりたいもんだね。
場所に限らず、コミュニティーについても。

ちなみに、お察しの通り、周辺の大半の樹林が人工林。そうじゃないところも二次林で、40年前くらいに火入れか山火事があったらしい。表土が薄く、一昨年の台風で大量の樹木が打ち倒された。近所でも「木の墓場」ができているのだ。見せたかったね。
それから、道央道の「北広島IC」と「札幌南IC」の間には、原住民が見ても、外国の高速道路の景色のように思える場所がある。

もっといろいろ見て欲しいところもあったし、話もこれから盛り上がりそうな感じだったのだが・・・ぜひまたゆっくりと寄って行ってくれい。(瀬棚の牧場にも連れてって)
いやー、本当に面白かった。

それからキヨミさん、夜更けに石川と盛り上がりすぎて、ほとんどほったらかし状態にしてしまい、申し訳ありませんでした。
これに懲りずに、ぜひまたいらして下さい。

TAKEさま
なんどもハンドルネームは拝見しておりましたが、まさがあのイマイさんだったとは気が付きませんでした。イシカワ君も意地悪だなぁ。あたしも大学以来お付き合いのあった人間で、ゾミカナ←です(知ってたかなぁ?)。今はホッカイドーに帰って楽しくやってらっしゃることが伺える生き生きとした記述でした。イシカワの文章さすが! よかったですね、久しぶりの再会。以後バーチャルでよろしく。たまに出没しますので。

enteeさま
こちらこそ!お久しぶり!
私もハンドルネームは常々拝見しておりましたが、まさかあの・・・いや、お懐かしい!
音楽番組などで、オーボエが出ているのを見るたびに思い出していました。
「あの『リード』は、自分で削るんだぜ。いや、大学のときの同級生で、オーボエ吹いてたやつが居てさ・・・」など、聞きかじりをひけらかす一つ話のネタにしたりして。
いやー、ずいぶん前にご帰国されていたというのも、こないだ石川から聞きました。バーチャルとは言わず、リアルでもよろしく。ね。NYよりは、ずっと近いんだからさ。

仮想同窓会。

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