北海道へ行ってきた。家族で。
主な目的地は2箇所。ひとつは大学以来の友人とその夫人、および北海道犬一匹が在住する千歳。
イマイ家は千歳郊外の住宅地の外れにあって、ほとんど国有林の中に埋没しているような地所で、事前に調べたGoogleMapの衛星写真が目を疑うような画像で、住所を間違えたかと思って何度も確認してしまった。
実際に辿り着いてみると、もとはイタリア料理のシェフが住んでいた家を改装したその2階建ては、まるで旧軽井沢の別荘のごとき「森の家」であった。家の前には中古のランドローバー。玄関を入ると吹き抜けのリビングに薪ストーブ。窓の外には地平線まで続く落葉樹林。北海道で見る落葉樹林は、実にネイティブな樹林に見えるが、あとで調べると、そのあたりでも自然林はほとんど残存していないらしい。林床にササが優占するミズナラやシラカンバ林は二次林のようだ。しかしそれにしてもその広さというか、森林の「厚み」の風景は圧倒的である。ランドローバーで恵庭まで出て、イマイの勤め先の会社が経営するレストランで夕食をご馳走になり、またイマイ「森の家」邸に戻って、夜中まで「デザインとは何か」「良いものを作るとはどういうことか」みたいなコアな話に興じ、千歳のANAホテルへ引き返して宿泊。
翌日、モエレ沼公園に立ち寄って、レンタサイクルで公園をぐるぐる回ってから(外気温5度で強風という、真冬のような天候だった。寒かった)、次の目的地、日本海沿いの瀬棚へ、4時間のドライブ。道央自動車道は空いてるし、高速を降りても車は疎らだし信号はたまーにしか出現しないし、ほとんど走りっぱなしで、予想を上回る早さで着いてしまった。
瀬棚には、先月、牧場を購入して、伊那から引っ越してきて就農した実妹一家が住んでいる。谷間の斜面林(ニセアカシアの樹林だったけど)のなかに、家や牛舎が点在する、んもう絵に描いたみたいな「牧場!」という趣のクラタ農場で、牧草地の丘を登って海に沈む夕陽を眺めたり、無謀にも畑作りを少し手伝って筋肉痛になったり、さっき絞ったばかりの牛乳を飲んだり、夜に訪ねてきてくれた、近くで牧場を営む高校時代の後輩と、無農薬有機農業のビジネスから高校時代の思い出話まで、つもる雑談に興じたり、薪割ったりウシなでたりイヌと走ったり、これは毎年、夏休みに自分のコドモらを研修に寄越さないといかん、と決意したりして3泊。
いやじつに、120%、北海道を満喫した小旅行なのだった。
北海道は決して初めて行ったわけではなく、函館から利尻島までいちおうは訪れたことがある。しかし、久し振りに東京からいきなり北海道へ飛ぶと、あらためてその、なんというか、街も人も物も、人工物の密度の「疎ら」なことに驚く。とにかく、モノとモノとの距離がいちいち大きい。気候の制約があるために、建物をはじめとする構造物がどことなくストイックな様子をしていて、それがある種の風景の統一を見せている。みんな車で移動するため、路上にはほとんど人影がないが、スーパーやレストランの内部は驚くほど賑わっている。そのノリも様子も、アメリカの都市、特に中西部あたりの内陸の都市によく似てる。恵庭から札幌へ向かう高速道路沿いの風景なんか、日本語のサインさえ無ければ、「シカゴ(あるいはミネアポリス、あるいはセントルイス、あるいはクリーブランド)へ向かっている」と言われたらそのまま信じただろうと思われるくらい。北海道の近代のキックオフに関与した、農業系アメリカの遺伝子がなんとなく残っているんじゃないだろーか。
帰宅してから、そういえば締め切り迫る原稿が数本あったことを思い出す。いや、旅行にはちゃんとラップトップ持参していたのだが、なんか、結局あまり手が着かなかったのだ。だってさあ。。。
連休明け、というか日曜日の午後からまた中国へ出張だし、うう、やばいぞこれは。