先週、今週の通勤本。
・竹村公太郎「土地の文明 地形とデータで日本の都市の謎を解く」PHP研究所、2005
荒俣さんの推薦文に釣られて買ってしまった。
都市を「読む」手がかりとして、ありがちな自然・環境決定論でなく、治水や土地造成などのインフラに注目してみる、という視点は興味深い。たしかに「インフラ」は、人の営為としての都市と、土地の自然との拮抗が像をなしたものであって、その成り立ちを解読する知識とコツを持てば、世界の都市に普遍な部分や、その土地固有のユニークな事態が浮かび上がる。のだろう。
しかし、(書名から)何となく予想していたんだけど、事象の取捨選択の恣意さと、結語への遠すぎる飛躍と、著者のなんというかちょっと芝居がかったような大仰な文章に辟易してしまった。
いや、面白いところが全然なかったわけではない。
たとえば、大正時代から行われた、石狩川の大規模な河川ショートカット改修は、洪水調節だけではなく、流速を上げることで川底が浸食させて水位を下げ、周辺の泥炭湿地の地下水位を下げて農業に適した土地へ乾かすという、流水を逆手に取った地域排水計画でもあったのだそうだ。土木って凄いなあ。オサダさん知ってた?その分野では有名な話なのかな。
・中沢新一「アースダイバー」講談社、2005
これも「恣意性」と「飛躍」は、ある意味では「土地の文明」以上に甚だしいが、目のつけどころというか、土地のどういうところに惹かれるか、という「感じ」が、東京スリバチ学会なんかと重なっていて、シンパシーを感じてしまうのだった。街歩きに出たくなる本ではある。
・田中正大「東京の公園と原地形」けやき出版、2005
これはネタ満載。著者は東京近辺の、特に「谷津」地形を巡る。それが「公園」なのは、公園にはしばしば谷津地形が「ナマ」で残っているからだ。もちろん、何もかも手つかずの地形がそのまんま残っているわけではなく、公園化される以前に大名庭園だった場所ではその庭園化の痕跡があったりする。しかし、庭園や公園は多くの場合、土地を大造成して「使える乾いた平面」を確保しようとするよりも、谷津の「谷津性」を温存する方向で利用されている。
宅地開発で失われた谷津地形も挙げつつ、愚痴っぽくなったり、文明論に飛んだりもせずに、その場所の地形の「受け取られかた」の歴史を淡々と語るような、抑制の利いた文章も気持ちいいし。今尾恵介さんの文章にちょっと似てる。冒頭、「地形は呼んでいる」と著者はいう。その「気持ち」、僕はたぶんわかります田中先生。
・進士五十八「日本の庭園 造景の技とこころ」中公新書、2005
ええと、また後ほど。。。