2005年4月27日

パブリックガーデン、プライベートランドスケープ

届いたばかりのGardens Illustrated(イギリスのガーデン雑誌)を開いたら、「Speaker's Corner」というコラム欄に、Tim Richardsonの懐かしい顔があって、ちょっと嬉しかった。また、書いてることが、かつての「New Eden」の巻頭で毎回しつこく書いていたことと同じ、「古くさいビクトリアンガーデンの保存に費やすお金を、もっと挑戦的なデザイナーに回せ」という主旨で、相変わらずのその調子が楽しい。

New Edenというのは、Tim Richardsonが編集長をしていたガーデン誌だった。ちょうど20世紀の終わり頃に創刊された雑誌で、マーサ・シュワルツの特集をしたり、いきなり「造花」の提案をしたり、ファッションデザイナーに生花の下着をデザインさせてモデルに着せたり、なかなかラジカルで、装丁もキレイで、毎号、非常に楽しみにしていたのだが、2年ほどで廃刊してしまった。版元から届いたお知らせの手紙には「あなたが既に予約購読代金を支払ったところの今年一杯ぶんは、別なガーデン雑誌をお届けします」と書いてあり、それから数ヶ月、「English Home Gardens」とか何とかいう御婦人向けの園芸雑誌が配達された(要らんのに)。

New Edenが出ていた頃、Gardens Illustratedも編集長が変わって紙面も一新し、Dan Pearsonが監修に入ったりし、雑誌の主宰でKathryn Gustafsonの講演会が開かれたりしていた。Christopher Bradley-HoleやPaul Cooperの本が次々に出て、なんかこう、イギリスの庭のデザイン方面はちょっとホットだったのだ。我が家のポストにはキレまくった記事満載のNew Edenと、王立園芸教会の「The Garden」の球根特集が同時に届いて、ガーデン文化の「厚み」も感じたし。

その後、版元と編集長がまた変わって、Gardens Illustratedもずっと保守的になってしまい、以前の新鮮なわくわくする感じは薄れた(こっちが慣れちゃったのかもしれないが)。でもまだ、辛うじて「English Home Gardens」的雰囲気とは一線を画している(少なくともTim Richardsonがコラムに登場したりする点で)、この雑誌は僕は好きである。

日本の場合、「造園」と「園芸」は植栽のリソースからして分かれているため、その間を行ったり来たりするのは(手続き的に)少し面倒だが、最近は施工会社も「園芸」に慣れつつあるし、造園材料の生産者の視野もずっと広がっている。「緑地」と「庭」を分けてるのはしょせん、制度でしかない。公共空間を対象とする『らんどすけーぷあーきてくちゅあ』は、閉じたプライベートな庭を対象とするガーデンデザインとは異なる、とか了見の狭いことを抜かしてるヤツは表へ出ろ。

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