2005年4月 4日

場所と空間(と丹下健三)

植田和弘、神野直彦、西村幸夫、間宮陽介編「岩波講座 都市の再生を考える・1:都市とは何か」岩波書店、2005

それぞれの論文も面白そうだが、まずは「場所と時間 先行形態論」を読む。
以前、メディアデザイン研究所の飯尾さんが中谷さんの文章を評して「発見的」と言っていたが、ほんとにそうだ。中谷さんの先行形態もそうだし、南さんの「極域」とか、五十嵐さんの宗教建築とか、書き手の「あ、そーだったのか!」が伝わってくると、こっちも興奮して面白く読めてしまうのだ。

中谷さんは、「空間」と「場所」を、対立概念としてだけではなく(これを『対立』させるような物言いは、ラ系の得意なところだ)、計画の論理と土地の実際、という関係として見てみよう、という。これ、さらりと書かれているけど、けっこう膝を打つような視点の据え方である。使えるぞ。

広島のケーススタディは、驚きだ。原爆によって白紙化したように見える広島の街が、むしろ被爆したことでその「表土」がはぎ取られて、もっとずっと古く長かった近世の町割りが補強されちゃった、ということ。都市の「変容」のダイナミズムが、ぱっと見は都市を刷新したように見える行政による都市計画よりも、戦後のヤミ市の、いわばエコロジカルな「発生」が促したのだということ。

最後に引かれている丹下健三さんの平和記念公園の計画の考察が、ちょっとびっくりである。丹下さんには、広島の街の「大事な部分」が見えていたんだろう、という。引用されている箇所から孫引き:

「都市は焼け野原になってしまいましても、決して白紙ではないということであります。都市はいつでも元に帰ろうとする生きた力をもっております。白紙の上に理想的な将来の都市を描いても、そこからは決して新しい明日の都市は生まれてこないということであります。いつでももとの古い都市、私たちが精算し、克服してゆこうと思っているような昔のままの都市が、そのまま再び生き返ろうとしております」
「都市は構造を持っている。計画は、その構造の因果関連の分析である。それは、その構造に何らかの衝撃を与えるとき、そこから生まれる効果の因果的な関連を測定することである。そうして、その有効な衝撃の具体的な方式を発見することである」

鳥肌。これってつまり「先行デザイン宣言」じゃないか。
やっぱりすげー人だったんだ(今更なにを)。
実はちょっと避けていたんだけど。こういうのも読まないといけないんだろうな。
Amazon.co.jp: 本: 丹下健三
しかし高えー!¥29,925(税込)。さすがに買えねーよこれは。文庫にしてくれよ。

国土地理院の航空写真閲覧ページで、米軍撮影による1947年4月の広島市街を見ることができる。
空中写真(標準画像),USA10kCG,広島,M251,25
相生橋を中心にして、ほんとうに吹き飛ばされたみたいに建物がない。
最初、光の加減でハレーションが起きてるのかと思った。
凄まじい写真である。

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コメント

この国土地理院の写真の真ん中あたり、川が二股になるところ、その中洲の島の始まりが広島平和記念館の場所ですね。本当に吹き飛ばされています。

中谷さんチェック早過ぎです(笑)。

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