やるじゃねーか農大。
戸田芳樹さんにわざわざお声かけ頂いたので、氷雨そぼ降る土曜日、農大造園にお邪魔した。
場所は馬事公苑に隣接した隈さん設計の「食と農の博物館」の1階ホール。時間に余裕があれば、調布から渋谷行きのバスで直行するというオプション経路もあったのだが、家を出るのが遅くなってしまったので、電車を乗り継いで、久し振りに小田急の経堂から歩いた。
僕は学生時代、電車で通うような所に下宿していたため、経堂駅から農大までは毎日のように通った。「農大通り」、特に商店街を過ぎて住宅地に入ったあたりの風景は、あのころと比べても、ほとんど目眩がするほど変わっていなくて、その「変わっていなさ」に、自分自身に積んだ20年近い歳月を感じてしまった。
今回の趣旨は、同博物館で開催中の「RLA展」に付随するイベントとして、学生の「作品」をネタにランドスケープ教育について語り合うトークセッション、ということだったのだが、まあ実際は、学部3年の後期のスタジオの成果の「公開レビュー」だった。
僕は遅れて会場に着いたため、後半の、比較的大規模なオープンスペースを対象地に選んだ学生たちの発表だけ拝見した。3年生だし、それほど期待せずにいたのだが、これが実に見応えのある発表で、まったく驚いてしまった。農大ランドスケープのレベルは確実に上がってる。戸田さんがずいぶんチカラを入れられたのだろう。戸田さん凄いな。もちろん、数十人の中から選抜された作品だし、どう見ても周囲の院生たちが口を出し手を貸した痕跡は明らかだったんだけど、そうだとしても、そのようなリソースを有していることが、全体の水準の高さをよく示している。少なくとも、僕が学部3年当時の状態で現在の農大造園にいたら、きっと落ちこぼれていただろうと思う(では当時は優秀な部類だったのかというと、・・・えーと)。
惜しかったのは、イベントの趣旨が必ずしも「クリティーク」でなかったためもあってか、コーディネーターの北川明介さんが招いたコメンテーターの方々の「講評」がみんな優しすぎて、いまひとつ歯ごたえのある雰囲気にならなかったことだ。建築学科の講評会などでは、学生が立ち直れないんじゃないかと思うくらいボコボコにされるのを目撃することがある。まあ、無理に厳しいことを言う必要はないけど、もうすこし、議論を喚起するようなコメントがあってもよかったと思った。一人、「実務レベルから見れば通用しないアイデアだ」というような意味の、見当はずれな(というか、学部3年の演習の趣旨からして、何を期待するというのだ)ことを述べておられた方がいてげんなりしたが、そのコメントがいかにも場違い的に宙に浮いたのは救いだった。
あと、全体を通しては、なんというか、「造園の壁」が感じられたのが惜しかったな。
造園は、専門課程において、現代の都市に象徴される(否定的な)事態に対して、「緑」や「アメニティ」や「良き景観」や、近年では「エコロジカルな環境」というような、「善」的事態を実現することが社会的ミッションである、というところから出発する。それ自体は決して「間違っている」わけではないけれど、そこに軸足を置いてしまうと、ことに設計の方法論として、「決まり文句のワナ」に嵌ってしまうことがしばしばある。
妻によると、彼女が教えている専門学校の設計演習で「公園」が課題になると、多くの学生がまず中央に噴水を配するそうである。「どうして噴水なの?」と聞くと、「公園だから」と答えるそうだ。「噴水」が公園の記号として刻印されているわけで、ほとんど微笑ましいような話である。
でも、実はこれは笑えないと僕は思う。彼らにとっては、噴水を置くことが、その場所を「公園」たらしめる、「デザイン的解決」なのである。これが滑稽に感じられるのは、噴水という施設があまりにあからさまに典型的だからに過ぎない。見回せば、ベンチとか散策路とかデッキとか「シンボル樹」「たまり」「見通し」「軸」というような、それ自体の意味や価値の検討がされていない面妖なエレメントや、「オープンスペースの確保」「豊かな緑」「歩車分離」「コミュニティの活性化」「生態系の再生」「自然な色合い」「環境共生」というような複雑そうなものでも、それ自体が目的化した「決まり文句」がデザインボキャブラリーに陥っている事例なんて、プロの手になるものでさえ、いくらでもある。
建築の学生のスタジオなんかだと、最近は建築の自明性を疑って「それでもあえてここに何かを建設するとは」みたいなところまで立ち戻って考えているような「コンセプト」がよくある(もっと脳天気なアプローチも多いけど)。「ランドスケープの自明性を疑う」というのは、建築のそれよりもたぶん困難だし、ことに造園の「中」にいるとなかなか難しい思考訓練ではあるだろうが、「学生の課題発表」にはそういうのを期待しちゃうのだ。
追記:
f/w - 求む!デザイン学生
なるほどたしかに、「景観」の最前線はそこだったのだ。
公務員試験に受かるべく、基礎学力も向上する必要があるぞ。母校よ。
(といって公務員試験に落ちたのは。僕だ)


コメント
学内に居るものとして、卒業生の皆様の協力が一番必要なように感じております。ぜひ、今後とも学内イベントに足を運んでいただきたく思います。
Posted by 88 at 2005年3月10日 16:11
今度、スリバチフィールドワークに誘うからね。
Posted by 石川初 at 2005年3月10日 18:03
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