2005年1月23日

大阪ってどんなですか調査

(あるいは「先行デザイン」をもっと楽しむためのウィークエンドプロジェクト)

「先行デザイン宣言」の、今回の10+1誌上で提案されているプロジェクトを拝見するに、残念なのは僕に大阪の土地勘がほとんどないことである。特に、最後のほうの埋め立て地改造案や首都機能移転のようなスケールの提案において、その形や内容や、計画のプロセスは刺激的だが、僕自身が実際の土地の様子を知らず、あまり具体的なイメージがないため、大阪をよく知っていれば味わえるかもしれなかった「ここにこれ作っちゃうのか!」「この手があったか!」というような興奮を得損ねているような気がするのである。

そういうわけで、そこに生活してみて感じるような、「土地の気配」はいきなりは無理だとしても、せめて大阪および周辺のアウトラインをツカむべく、手持ちの資料とネット検索で、安易で初歩的な「自宅週末地域解析作戦」をすることにした。
ツールは「カシミール3D」、国土地理院の全国50mメッシュ標高データ、カシミールの解説本に付録でついてきた地形図、およびデジタル・アース・テクノロジー(株)の「スカイビュースケープ・世界衛星画像」。

1.まず、ランドサットの写真を眺めてみる(いつもの手順である)。

大阪平野、奈良盆地、京都盆地がべたっと都市化しているのがよくわかる。
紀伊半島を東西に横断している中央構造線がすごい。
しかしまあ、このスケールで見ても関西空港というのは過激な構築物である。東京の中央防波堤とタメ張ってる。

2.もうすこし寄った衛星写真。

大阪湾の海岸線はたしかに、いかにも「道路」的な構造物に占められている。
平野南部をよく見ると、小さい緑の「ぶつぶつ」が見えるが、これが古墳群である。
写真の左上のほう、六甲山の北あたりの丘陵地の緑が、やけにモザイク状に減色しているのが気になるが、

3.その部分を拡大してみたら、なんとゴルフコースの海である。

すげー!千葉の「ゴルフ銀座」以上の密度かもしれないぞ。

4.衛星写真1とほぼ同じスケールの地形図。

見比べると、都市化がほんとにきっちり平野に沿っていて、都市の形が地形を浮かび上がらせているような感じだ。

5.地形図の色分けを変えて、海抜10m以下をブルー系にしたもの(東京キャナル以降、凝ってるパターン)。

低地のこまかい標高差を表示させてみると、平野が意外な相貌をあらわす。

6.地図を重ねたもの。

京都に比べると、奈良の標高がけっこう高いことがわかる。というか、京都盆地が内陸のくせにずいぶん低い。京都盆地って、思ったよりも南へ広がっている。京都の市街地は「底」にあるわけではななくて、盆地の北半分の「南斜面」に引っかかっている。京都盆地の最低地は巨椋池だったのだ。ちょうど水色で再現されている。わかってなかった。。。巨椋池のほとり出身のくせに。

7.大阪平野南部の地形。

画面の下のほう、斜面にニキビみたいに古墳群がある。この地形データは50mメッシュだから、つまり、古墳は50mのピクセルでも「地形」として拾われるようなスケールだということだ。
気になる点が二つ。
なんといっても、平野の中央に横たわる上町台地が目立っている。まるで防波堤みたいな形だ。これはどうした事情によるものか。
もうひとつは、画面の下1/3くらいのところを「東西」に横切っている川である。生駒山地の南端から平野へ流れ出て、どう見てもそのまま北へ流れていきそうな川が、斜面を横切って大阪湾へバイパスしている。きわめて不自然。

まずは、「上町台地+地質」で検索。
http://www.hp1039.jishin.go.jp/kozo/Osaka7/2-1-3.htm
文部科学省の地震調査研究推進本部のサイト内、大阪平野の地質と地形概要ページ。
「大阪堆積盆地の東西地質断面図」がよくわかる。生駒山と六甲の花崗岩(まさに御影石)は、「基礎」としてつながっている。上町台地の左にエキスパンション・ジョイントがある。やっぱり断層だったのだ。なんか、生駒山が大阪を「押してきてる」みたいに見えるな。
総合層序表によると、上町台地の「芯」の「大阪層群下部」というのはおおむね100万年くらい前に積もったものらしい。古い。当時、メタセコイアがいっぱい生えていたみたいである。大阪に。
でもこの「アカシゾウ」ってのは何だ? 「アカシゾウ」で検索すると、
http://www.city.akashi.hyogo.jp/sangyou/kankou_ka/kataru/
そのまんま「明石象」であった。メタセコに覆われた、ゾウの行き来する大阪。すげー。

8.大阪平野南部の地図。

くだんの川が「大和川」であることを知り、「大和川+歴史」で検索。
http://www.yamato.kkr.mlit.go.jp/YKNET/history/index.html
国土交通省近畿地方整備局、大和川河川事務所のサイト。
やっぱり付け替え河川だった。しかもけっこう古い。上町台地の東の低地が「河内湖」だったということも知った。なるほど。

9.大阪中心部の、海抜1m以下の範囲を塗りつぶし。

これが、今世紀中にそうなると言われている海面上昇で(堤防がなければ)浸水する範囲である。河内湖が「復活」している。
近年の埋め立て地のほうが、海岸に近い陸部よりも標高が高くて、一種のリーフ状の地形をなしているのは、東京も同じだ。

10.以下は、比較のために同じスケールにした地形図。大阪と、

11.東京。

つづく。(かもしれない)。

トラックバックURL

このエントリーのトラックバックURL:
http://fieldsmith.net/mt/mt-tb.cgi/266

トラックバック

» 改め「ランドスケープとメディア」カテゴリー from SOLA Blog
アイザワも皆さんみたいにランドスケープ関係のネタがあれば良かったんですが、、、。よくよく考えると無いですね。というか、無知なだけにネタが作れない。ということで、... 続きを読む

コメント

前 NHKで京都の水の話を放送してたんですが、
http://www.nhk.or.jp/special/libraly/02/l0006/l0623.html
京都は扇状地だから地下水が良い、というような説明に、納得したような、地形的にいまひとつ納得しにくいような感じが残ったんですが、6番の図を見て納得です。他の扇状地とぶつかってるんですね。

東北側から巨大隕石が落下して、淡路島を引き剥がしたような感じですね。いや、淡路島がそのときのクレーターの左半分か。
断面図を見るとそんな形跡はなさそうですね。がっくし。

そうなんです。ウチの実家が盆地のほぼ底辺にあることが判明。>京都

たしかに、そう言われてみれば大阪平野と大阪湾ってなんか、竹を斜めに切った断面みたい。海底地形を見たら、最も深いのが紀伊半島と淡路島の間の友島水道です。隕石あるかも。海峡の海底に、見たこともないような量のモリブデンとか埋まってるかも。>隕石

こんにちは、石川さん。

ランドスケープ系Blog?の挨拶回りでトラックバックさせて貰いました。今後ともよろしくお願いします。

たびたびお邪魔します。素晴らしいリサーチとても参考になりました。ランドサット映像は扱いたかったのですが、Mac使いには世の中は冷淡でなかなかよいコントロールアプリケーションがありません。溜飲を下げた思いです。「スカイビュースケープ・世界衛星画像」のホームページを訪れてみたのですが、トップページは何と前方後円墳!これ利用できないのかな。
さて、石川様はじめ近隣でご興味ある方がおられましたら、大阪にお寄りの際はぜひ当方を訪ねてみてくださいませんか(連絡用にゼミのメールを書いておきました)。証明するにもできないような内容(古代人による「ナス化」計画とでもいうべきか)で発表できなかったものもいくつかあり、ご意見いただければ幸いです。その代わりいくつか面白いところにご案内さしあげます。私たちの知らない「日本」があるのは面白いことですね。
当方は気長に、いろいろなことをやっています。先行デザイン−都市連鎖は息の長い活動になると思いますので、急ぎません。それではまた今後ともよろしくお願いします。

おお。行きます行きます。ぜひお邪魔します。それは楽しみ。その折にはよろしくお願いいたします。僕は気に入るとしつこいので、当分先行デザイン周辺をうろうろする予定です。中谷さんの論考は、なんというかこう、発見の悦びというか、「見つけたぜ、ほら見ろよこれ」感がたまんないです。

>Mac使いには世の中は冷淡で
そうなんですよね。
ぼくはほとんど、「カシミール3D」のためにWINノートを持っているようなものです。昔のワープロ専用機みたいに、「カシミール専用機」があったら買うと思います。

はじめまして。
私のブログで巨大地震への対応について考察したいと思います。
その中で、石川初さまのこのエントリーの中の図を2枚引用させてくださいませ。

ご自由にどうぞ!

コメントする

(初めてのコメントの時は、コメントが表示されるためにこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまでコメントは表示されませんのでしばらくお待ちください)