sales Talk
土曜日のお昼過ぎ、ようやく子供を昼寝に持ち込み、書きかけの依頼原稿の仕上げにかかろうというとき、セールスの電話がかかってきたのだ。
相手(若い男の声)「お忙しいところ恐れ入ります。当社は○○商会と申しまして、ただいま調布市内のマンションのご案内を差し上げているところなんですが」
僕「(目一杯、露骨に不機嫌そうな声で)・・・はい」
相手「あの、失礼ですが、石川様はご自宅は持ち家でいらっしゃいますか」
僕「・・・いえ。借家です」
相手「あの、たいへん失礼ですが、お家賃などは結構、ご負担ではないでしょうか」
僕「負担?・・まあ負担といえば・・」
相手「今後、ご自宅をご購入などということはお考えではないでしょうか?」
僕「(思わず一息考えて)そうですねえ。想像してみることはないわけじゃないけど。まあ、いまのトコロに満足してますからね。これで。」
相手「仮にですね、ご自身でお住まいにならなくても、マンションは投資物件としても、いまなら、」
僕「不動産に投資するモトがないですよ。そもそも」
相手「いまですと、時期的に、すごくいいタイミングだというのはご存じでしょうか?実際にローンとかですね、仮にいま」
僕「時期ってなんですか?」
相手「あの、金利とかですね、たとえば銀行」
僕「いや、金利は上がったり下がったりするだろうし、景気も良くなったり悪くなったりするでしょうけどさ、どちらかというと、家族の今後とか、いま何歳でどのくらい収入があるとか、子供の教育をどうするとか、そういう個人的なライフプランのほうが重要なんじゃないですか?家を買うタイミングなんて。時期にしても場所にしても」(←議論してどうする)
相手「?・・はい、えー、そうですね・・」
僕「(切り上げるつもりで)いずれにしても、ウチはマンションはダメですね」
相手「えー、それはやはりあの、一戸建てでないと、というようなことで」
僕「一戸建て?(つい考える。たとえば2世代とか3世代同居で、玄関も別だったりしたとき、あれって『集合住宅』とは言わないんだろうか?)いや、一戸建てっていうか。・・庭がないと嫌ですしね・・」
相手「(なんか、急に生き生きと)あ、実はですね、いま私どもがご案内差し上げていますマンションは、ちょっと変わったものでして、コーポラティブマンションというんですが、ぜひモデルルームに起こしいた」
僕「コーポラティブ?」
相手「あのー、メゾネットといいまして、マンションなのに1階と2階があったりですね、お庭があったり」
僕「ゼネコンはどこですか」
相手「?・・えー、H社が入っているんですが、」
僕「へええ。でもコーポラティブなんですよね?そういうのもやるんですか?最近?」
相手「え?・・あ、あのー、Hコミュニティという会社でして、そこがあの」
僕「そりゃ管理会社でしょう」
相手「あ、施工はですね、えー、○○建設です」
僕「設計はどこですか」
相手「設計はですね、えー、(書類めくる感じの間)○○○○一級建築事務所(←棒読み)です」
僕「その事務所は、コーポラティブをいつも設計してるんですか」
相手「え?いや、えー、」
僕「あのね、どうしてコーポラティブを、商社さんが『売る』んですか?欠員が出たとかそういうこと?」
相手「え?あの」
僕「ねえ、コーポラティブって何のこと言ってるんですか?コーポラティブって、家を欲しい人が集まって、組合でも作って、共同でマンションを建てるやりかたのことですよね。メゾネットだからって必ずしもコーポラティブじゃないよね。それとも最近は、コーポラティブ風スタイルとかいうのがあるんですか?」
相手「・・・えー、」
僕「住まなくても投資になるっていう売り文句も気に入らないよねー。ほんとにいいマンションだったら住むんじゃないですか?住宅を投資対象にしたりすると、そうやってどんどん、街が悪くなっていくんじゃないですかね。だって、投資で買う人って、デベロッパーみたいにマンションを見るわけでしょう。住民の目じゃなくて」
相手「えー、石川様、ではまたご縁がありましたら、ということで・・・」
僕「まてよ、でもあれかな、土地が値上がりしたりしなければ、みんなが自分の住まいの不動産価値を高めるために頑張ったほうが、逆に良くなっていったりするのかな。」
(ここで電話がしずかに切れる)
・・・物件の名前を聞くのを忘れた。


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