2004年6月25日

May 23rd, 2004 @noon: It's a Girl.

他がどうなのか知らないが、その産院は自然分娩のお産ばかりでなく、帝王切開の手術にも夫が立ち会うことができる。

まず、手術室に妻が運び込まれる。手術のプロセス全体は1時間余りで、そのうちの前半は麻酔やら何やらの「仕込み」である。その間、夫は手術室の前室のような場所で、白い帽子とマスクと上っぱりを着せられて待機している。3、40分ほど過ぎると、いかにも手術中という感じの出で立ちの、帽子とマスクから目だけ出した看護婦が「ご主人様どうぞ、こちらへ」と呼びに来る。オペ室へ入ると、中央に、でかい照明に煌々と照らされた手術台があり、それを囲んでドクターが2人、助手っぽい若いドクターがひとり、看護婦が2人、そして中央に、開腹が「半分」終わっていて、とてもここでは描写できないような状態の妻が横たわっている。夫、つまり僕は、妻の頭の方に回って、側に立っているように促される。手術はてきぱきと、どんどん進む。ドクターの手元でがちゃがちゃとツールらしき金属音がし、看護婦が横から血圧モニターを読み上げる。妻の身体には麻酔がかかっているが、首から上は覚醒しているので、意識ははっきりしていて、話もできる。でも、おなかに大穴があいているのに、平然と会話する妻、というのははっきり言って「ものすごい」光景である。手術が進むにつれて、僕の足からどんどんチカラが抜けてゆく。んもう、これ以上この光景を見せられ続けたらこのまま卒倒して僕がこの病院の世話になるぞと思い始めた頃、文字通り引っ張り出されるようにして女の子の赤ん坊が出てきた。

一昨年、長男も帝王切開で生まれた。でも、難産の末に緊急手術となり、母子ともにへとへとで、コドモの産声もなんだか弱々しく、母親は翌日に痙攣を起こして呼吸困難になり、救急車で大学病院へ運ばれて集中治療室に1週間入れられた、あの騒ぎに比べると、今回はあっけないほどにスムーズなお産(というか手術)であった。長女は小柄ながら、出てきた途端に力強く泣く、やたらと元気な赤ん坊だ。手足をばたつかせている長女を手術台の上から見て、妻はぽろりと涙を流した。予定日よりも早く生まれ(させられ)た、娘は2.5kgあまり、抱かせてもらうと実に軽くて小さい。でも、生まれてきた子を抱いた瞬間の、何とも形容しがたい「手応え」はいつまでも手に残る。ともあれ、6月23日12時16分、無事に長女がうまれました。母子ともに順調です。感謝です。

そういうわけで、息子よ。1年9ヶ月の短い間だったが、家族内のリソースを独占する夢の日々は終わりを告げたのだ。しかも、なんだか実に溌剌と元気な妹が、おとなしくて慎重な兄を圧倒する、強い予感がする。父としては、「歳の近い妹にやりこめられてばかりいる兄特有のコンプレックスのために屈折した少年」なんてことになってしまわないように祈る。

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