隣の芝生。
街の様子も植生も完全に熱帯だというのに、廈門観測史上初めてという、不意打ちのような寒さのなか、朝早く集合して車に分乗し、石の山やら工場やら先方の事務所やら一日中移動しまくって観光なんかする暇がまったくなく、日が暮れると現地の石材会社の「老李(ラオ・リー)」と晩餐をともにして、この世のモノとは思えないような食事(食文化をあそこまで極める民族を僕はこよなく尊敬し畏怖する)のあと、13種類の漢方だかなんだかが溶入しているお湯に浸した足を1時間半ツボ押ししてもらうという、これもこの世のモノとは思えないようなトリートを受けて、前後不覚になって昏睡するという一週間が過ぎ。
金曜日の夜は、六本木ヒルズの森美術館で開催される「六本木クロッシング:日本美術の新しい展望2004」という展覧会のオープニングレセプション/内覧会に行った。
http://www.moriart.org/contents/roppongix/
いわく「現代美術を中心に、デザイン、ファッション、建築、メディアアートなど多様なジャンルから、複数のキュレーターの異なる眼差しによって参加者が選ばれています。すでに永いキャリアを持つアーティストから若手注目株まで、年齢に関係なく、その時代を代表する創造的で刺激的なアイデアを紹介します」
その、キュレーターが選んだ「注目すべきクリエイター」57組のうちのひとつとして、「東京ピクニッククラブ」(以下、TPC)が出展していて、それをちょっとお手伝いしているためである。キャスターのついた、四角い一坪の芝生を、ピクニックセットやら今回のためにブレンドしたお茶やらお菓子やら、「ピクニックの心得」と一緒に並べちゃうという内容のもの。
Special Thanks To: 共同カイテック
http://www.ky-tec.co.jp/
内覧会はすごい人数で混雑していて、会場にはいかにも「現代アートとその周辺の関係者」然とした男女が超然とした笑みを浮かべて闊歩していたのだった。そのなかに、「作品」を嘗めるごとく睨みながら歩いている某「評論家」を見つけ、それがまた実に会いたくない人物だったため、足早に会場をひとまわりして、シャンパングラス片手に談笑するレセプション会場の群集に逃げ込み、誰とも目を合わさないようにしてしばらくサンドイッチやチーズをぱくついたあと、裏の動線を通ってTPCの展示コーナーへ戻った(おかげで、他の作品をあまりじっくり鑑賞できなかった)。
土曜日。一般へのオープニングの日、午後から「アーティストトーク」というイベントに参加した。これは森美術館の企画で、アーティストが作品の前に陣取っていて、見に来たお客さんが気さくに「作者」に話を聞けるというやつで、20人くらいのアーティストが参加していた。
僕らは、太田さん伊藤さんご夫妻、フードコーディネーターの福留さん、と4人でTPCコーナーに待ちかまえた。これは面白かった。作者の名札をつけて立っていると、お客さんがけっこう質問してくる。森美術館の場合、森タワーの展望台と一緒になっているため、他の「現代美術館」よりも客層が広いのが特徴なんだそうである。たしかに、「アートをチェックにきました」という感じのひとよりも、タワーに登りにきた家族連れやお年寄り群の観光客が圧倒的に多い。これは、展示物にとっては幸いなことではある。
個人的には、おばちゃん相手に芝生の特性なんかを話している方が楽しい。一方で「深読み系」というか、なんか暗い顔をしたひとに「いつもこういう立体のインスタレーションでやってらっしゃるんですか」なんて訊かれると、答えに窮してしまうのだった(インスタレーション「で」ってなんだよ。顔を見て話しかけろ)。もう言い古されているのかもしれないが、「美術館」に「展示」してある「作品」という事態というか、なんかこう、アートの意味をめぐる議論を喚起する場所である。森美術館。
あと、ちょっと新鮮だったのは、「東京/ピクニック」という響きに、即座に反応してくれる若い人が何人もいたことだ。さすがに太田さんたちは、ある種の人のココロを掴むストーリーを紡ぐのが上手である。
あと、そうだ、五十嵐太郎さんの妹さんのジャンヌさんが見に来てくださっていた。
そして土曜の夜。閉館後、設置の日にできなかった「芝生の水やり」に行った。太田さん伊藤さん夫妻、スパイラルの松田さん、それに特別ゲストというか臨時手伝い人というか福島の佐藤さんが合流してくださって、美術館のトイレの水栓にホースを繋いで、2時間くらいかけて芝生のコンテナ全部に注水した。
佐藤師匠は、「森ビルの最上階で芝生に水やりをしている図」を面白がって、しきりに写真を撮っておられた。ので、間もなく佐藤さんのサイトに写真が掲示されるだろうと思われる。みなさまご苦労様でした。


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