2003年11月24日

ワラッテイイトモ、

吉祥寺のKISS CAFEで行われた「ワラッテイイトモ、(無修正版)」の上映会から戻ったところ。
これは、たいへんなものを見てしまった。うーむ。しばらくはテレビを無心に見れないじゃないか。

上映が終わったあとの、会場の「困惑」というか、一種の気まずさというか、笑いがこわばったような空気がなんともいえない。なにか、見たくないものを見せられたような、胸騒ぎのような、後ろめたいような気分になった。

上映会が済んでから、KISS CAFEのあるビルを出て、並びにあるBOOK OFFに、つい習慣で入ってしまったんだけど、なんかもうダメである。でかいフロアに新書や文庫やビデオやCDの背表紙が並んでいるのが、妙に現実感がなく、ニセモノに見える。なんだかぜんぶ「バカ」に見える。というか、そのなかで新書やビデオを物色している自分がバカに思えてくるのだ。結構、ボディブローみたいな効き方をしますね。

内容については、もう様々なところで紹介されコメントされている。いや、いろんなところで「すごいすごい」と書かれているので、「五十嵐さんが絶賛しているアレを見に行くんだぜ」と、ちょっと構えて「鑑賞」してしまったのだが、もっと、何の予告もなしにいきなり見た方がびっくりしただろうと思う。

いやしかし、後半、テレビで放映される番組と、アルタ前に出掛けた作者の撮った映像と、八王子の公園に置き去りにされたテレビに映った映像と、音声と絵が反転したり早送りしたり巻き戻ったり、こう、ねじれ曲がってゆくところが、すごかったな。最後にいきなりフィジカルな終わりかたがあって、バカなことに僕はそれで少し救われたような気になりかかったんだけど、いきなり字幕が出てきて、その場面も公園にセットされたビデオカメラで「撮影されて編集されて上映されている」ということ(まあ当たり前なんだけど)を思い出す。うう。ちょっと気分が悪い。

「他にやることないんで、とりあえず作ってみました」というような投げやりな雰囲気で始まる割には、ものすごく緻密に作られている(僕は勝手に、もっと無造作な作品なのかと思っていた)。様々な深読みも解釈もできそうな。でも何度も見るもんじゃないな。ほんと。

キリンアートアワードの講評:
http://www.kirin.co.jp/company/news/08/031010_4.html

五十嵐さんによると、作者はこの作品をダビングしたテープを配ったりしているそうだ。著作権やら何やらのためにオフィシャルには上映できない作品ながら、テープはこれから自主流通的に広がって、裏ビデオみたいに「回し見」されていくわけである。それもまたこの作品らしい話だけど。

あと、「笑っていいとも」が82年に開始されて、以来ずっと続いているということにあらためて驚いた。82年というと、僕は高校生だった。一番よく見ていたのは大学時代だろうか。社会人になってからはほとんど目にする機会もなかったはずなのに、あのオープニングの歌や、コマーシャルに入る前の音楽を聞いた途端に、いやがうえにも、いかにも典型的な「ぼくらの(バカな)日常!」という感じがする、ポピュラーなバラエティ番組の凄さを見せつけられるような思いがした。

今夜は布団かぶってさっさと寝ちゃおう。明日は朝から施主プレゼンだし。

2003年11月23日

里山のサバンナの夕暮れ

土曜日はデザインヌーブの設計による「久が原のロッジ」のオープンハウスにお邪魔した。
久が原は大田区のど真ん中にある。大田区には、田園調布や千束のあたりの、古くからの高級住宅地然とした街と、蒲田や大森のあたりの、工業地帯を控えた下町然とした街があって、おおむね南北に分かれている。久が原はちょうどその「雰囲気の転換点」あたりである。「ロッジ」は主に外国から来ている留学生のための寮のような建物である。駅前から伸びる商店街の終端、角に「柳の木の交番」のある変形交差点に接している。計画道路に面しているために、道路から一定の幅で構造体が切り替わっているそうで、その部分、建物の先端はガラスと鉄骨で透明なカプセルを被せたような案配になっている。その「流線型加減」が、飛行機ほど流体力学的でなくて、船ほど無骨でなくて、ちょうどその中間というか、新幹線の車両みたいに見える。

たしかに周囲の建物のなかでは異彩を放っているけれども、写真で見たときに予想したほどは違和感がなく街並みに収まっていて、むしろちょっとユーモラスな感じもした。個人的には(個人的な感想以上の批評なんかできないのだが)こういう、張り切ってないかっこよさは好きである。入居が済んで一階に店舗が入ったときにまた見に行きたい。帰路、そこからあまり遠くないサカイさんの実家を襲撃。

日曜日は子供を連れて多摩動物公園に行き、クヌギーコナラ群集に覆われた丘陵地の狭間をうろうろしているサルやキリンやゾウやライオンやフラミンゴを眺めてきた。意外に、若いカップルが多いのに驚いた。動物園でデート。いや、いいんだけど。息子は大喜びで、ことにニホンザルが気に入ったようだった。老練なサルに比べると知恵も体力も完全に劣っているコドモを抱いて、乳幼児連れ家族の集団に混じってニホンザル集団と向き合っていると、なんというかサルとヒトが連続的に繋がっているような、動物と人間との異種間グラデーションを実感してしまうのだ。ウキッ。

動物園の近くに、新しく手伝うことになったプロジェクトの敷地があるため、視察に寄った。このへんは、今年の夏のワークショップで舐めるように調べたので、自分の位置さえ把握していれば、周りのどの尾根や谷がどういう地形を描いてどちらに続いているのか、だいたいわかる。多摩丘陵北部はまだ農地や雑木林が多く残っていて、住宅や大学のキャンパスなどの開発地とパッチワークをなしている。谷の向こうに広がっている多摩ニュータウンの夜景を見ながら、斜面林の多い丘陵地帯の眺めの醍醐味は尾根筋よりも谷間の「見下ろし」だなあと思った。

2003年11月21日

星は巡りぬ

携帯電話のGPS機能を試しまくった(おそらく今月の通信代は見たこともないような数字になっているだろうと思う)。

INFOBARはBREW対応の端末なので(←などという僕は原理はほぼわかっていない。新型のJAVAみたいなもんなんだろうと思う。たぶん)、一旦地図を端末にダウンロードするとサクサク動く。しかしやはり、eTrexに慣れていると、現在位置を確認してからサーバーに接続して緯度経度情報を送って、ブラウザが立ち上がってメニューを選ばされて地図をダウンロードして、と、実にまだるっこしい。

ただ、有料だけど、パソコンで検索した交通機関の経路や乗り換え時刻表のルートをサーバーに保存しておいて携帯と共有できるサービスは便利だ。いままでは「駅前探検倶楽部」とかで検索した結果コピーして自分の携帯にメールで送っていた。

しかしこうなるとバスの時刻表が入っていないのが残念だ。我が家からドアtoドアで経路を検索すると、駅まで30分、徒歩のルートが表示されてしまう。

ところで、こんなのがある。
http://ld.minken.net
auのgpsケータイを使っている人は投稿してみて下さい。
「場所のブックマーク」の地図を作る試み。
ユーザーの履歴から「移動距離」を表示する機能が面白い。
「デジカメ日記」みたいな写真が多いのがちょっと惜しい。
みんな風景撮れよ。

2003年11月16日

木々・草花・流木

木曜日、社団法人日本植木協会の新樹種部会の研修会に、なんと「講師」として呼ばれ、主に屋上緑化の植栽についてレクチャーをしてきました。全国の植木の生産者が集まる勉強会で、しかもこういう勉強会に参加しているくらいだから、知識も問題意識もこだわりもありまくりの植木生産の人たちが集まっているわけで、そんなプロの集団の前でえらそうにレクチャーするような内容を僕が持ち合わせているはずもなく、むろん彼らも大学の先生がするようなレクチャーは期待しているわけではなく、設計の若いヤツが何を考えて植物を使っているのか、ひとつざっくばらんに聞いてみようという感じで、楽しい会になりました。

それにしても、生産者は植栽の設計者の動向を直接知らず、設計者はどこでどういう植物がどのくらい生産されているのかよく知らないという、しばしば言われることをあらためて実感した会であった。ナーセリーとデザイナーの交流はもっとあっていい。こんなに面白い分野にコミュニケーションが不足しているのは何よりもったいない。

金曜日は新潟県十日町市の当間高原リゾートへ出張。朝6時半に自宅を出て新幹線と「ほくほく線」を乗り継いで十日町へゆく。帰路、リゾートのスタッフのムラヤマさんが僕の自宅のすぐ近くにある「ネイチャークラフトガーデン」というショップに用事があって、車で行くというので、便乗させてもらうことにし、図々しく助手席でぐうぐう眠って帰ってきた(関越に乗るところまでは起きていたのだが、目が覚めたら環八だった。こういう出張は悪くない)。

ネイチャークラフトガーデンというのは、東京電力の、ダムに堆積する流木や砂利などの廃材を利用して商品にして売ろう、という新事業として、2年ほど前にオープンしたガーデンショップである。僕らが着いたときはちょうど閉店時間を過ぎたところで、翌日に入っている結婚パーティーと、翌週からのクリスマスフェアのディスプレイの準備で忙しそうだった。

ショップにはカフェも併設されていて、そちらもなかなか賑わっているそうだけど、主力商品は「流木の再利用」である。椅子だのテーブルだの、庭のオーナメントだの、様々なものを売っている。植木鉢や植物や、その他のこまごましたガーデニング用品もたくさん並んでいるが、店内の棚やパーティションもほとんど全部が流木を利用した材でできているから、全体がなんとなく有機的にゆがんでくねくねしていて、目眩がするような空間である。

ショップの片隅に「設計室」があって、製図台の周りにスケッチや写真が貼ってある。住宅のリフォームと庭の設計施工を請け負う。ショップに来た客が声をかけてきて、そのまま仕事になるケースが多く、設計スタッフ2人では手が足りないそうだ。しかも三鷹市の新川周辺にはそこそこお金のある一戸建ての住民がたくさんいるらしく、庭の工事に100万円コースがザラにあるという。場所的にも時期的にも的を射た開店だったようだ。(でも写真を拝見するに、竣工物件はどれもぐにゃぐにゃでレンガ貼りである。)

ムラヤマさんには自宅にまで送って頂いた。帰宅したら英国王立園芸協会・日本支部の機関誌が届いていた。先日、自宅の庭についてインタビューを受けた、その記事が写真入りで掲載されている。開いてみると、最初のページにカラー写真がいくつも載っていて(むろん僕や妻の写真じゃなくて、庭や植物の写真である)、いきなり植物名と写真が間違っている。しかもグラスの写真。うーむ。校正でもっとちゃんとチェックすればよかった。これじゃまるで僕が植物の名前を間違って紹介しているみたいだ。しょうがねえなあ。英国王立園芸協会日本支部。植物にはうるさい読者ばっかりだろうから、きっと間違いの指摘が各方面から編集部に届くだろうなあ。

2003年11月12日

2日ぶりに秋晴れて気持ちの良い午後に仕事は山積み

土曜日、妻は仕事に出かけ、僕はコドモを背負って愛用の錆び錆びママチャリでGPS DRAWINGに出かけた。首尾良くやりとげた(しかし予想よりもはるかに時間はかかった)のち、ログをパソコンにコピーして結果を数字で見たら、全行程45キロだった。平坦な土地だからできるハナシだ。でこぼこの都心(東京の都心は、北多摩や武蔵野よりもはるかに起伏のある地形をしている)ではできないぞ。

形を描くことが目的なので、当然ながら普段は通らないところや、通ったことのない道を走ることになる。千川用水沿いなんか、なかなかいいところだということを発見したり、井形慶子さんの誇る「英国風」の住宅を発見したりした。

この住宅はしかし、じつに醜悪でおぞましい代物なのだが、我ながら意外だったのは、「いかにもハウジングメーカーが建てたような様子の家の表面に無理矢理『重厚』で『味のある』を狙ったフェイクな材料が貼り付けてある、という家が杉並区の住宅地に建っている」という風景に、「嫌悪感」は感じこそすれ、あまり(というか、もはや)「違和感」を感じなかったことだ。

見回せば、特にここ最近、同じ発想と手法で作られている建て売りの住宅が非常に多い。井形慶子さんのプロテストが「安価な住宅でも、それらしい素材で覆えばイギリスの住宅になる」ということであり、そういう住宅が「フツウ」の風景になる、ということが日本の住宅事情に望むことだったとすると、それはかなえられつつあるわけです。よかったね。

サイクリングを終えて、コドモを実家に預け、夕方から、お誘いいただいた景観デザイン研究会主催の展示会「土木/景観デザイン展」のトークセッション(会場の片隅に座って展示会について勝手なことをしゃべるという実に虫のいい企画)に五反田まで出かけた。「土木のデザイン」については、んもうまたこれが山のように考えたことがあるのですが、ハナシがとても長くなるので、後日。

2003年11月 4日

秋の週末

金曜日。

夕方、職場に、関東学院大の中津さん、オンサイトの戸田さんらが(飲みにゆく途中で)来られた。ウチの事務所には中津さんの教え子がスタッフとして3人もいる。なんか「ナカツ率」が高いのである。中津さんを捕まえてGPS受信機+カシミールのデモをし、購入を勧めた。脈がありそうなヒトをGPSサークルに勧誘するのがほとんど生活習慣と化している。戸田さんは来るなり僕の机を見て「きったない机!一番散らかってるじゃない!」と言った。なんだよ感じ悪いなあ。(でも机が散らかってるのは事実だ。うるせえ。)

その後、「東京ピクニッククラブ」の次なる企画の打ち合わせのために、千駄ヶ谷のデザイン・ヌーブへお邪魔した。常に「次の何か」を考えているひとたちと接するのは、へたをすると一日中コタツで丸くなりがちなわたくしには必要な刺激なのです。

土曜日。

息子を保育園に預け、妻は仕事をしに駅前の事務所へ出かけ、僕は家に残って寝室に棚を増設した。子供が生まれてからさらにモノが増え、次第に倉庫の中で荷物の隙間に暮らしているような様相を呈してきた。

夕方、駅の近くで妻と待ち合わせつつ、古本屋を覗いて、つい3冊も買ってしまって、自宅倉庫化を加速した。

日曜日。

午前中、久しぶりに教会へ行き(知られていないことだが僕は隠れクリスチャンである)(←知られているわけないが)、昼過ぎに近くのauショップへ寄って、発売直後の「INFOBAR」を触ってきた。いや素晴らしい。

深澤さんのコンセプトモデルのテイストがほどんとそのまんまで製品になってるところがすごい。こうなるとアンテナが邪魔だ。無印の壁掛けCDも、コンセプトモデルにはなかった電源コードが惜しかったんだよなあ。

でも、こういう「デザインのチカラ」に心を打たれるのは気持ちいいなあ。脱着式の飾りパネルで「着せ替えケータイ」なんてのを「デザイン」した人は反省してください。

妻は手に持った瞬間に、これに代えると断言した。というわけで、数日中に僕ら夫婦の携帯はauになる予定。すこし憂鬱なのは、寂しそうな顔をした調布のtu-kaショップの窓口で解約を申し出ることである。

月曜日(祝日)。

「国分寺崖線をゆく」第一段として、自転車で深大寺周辺から西北へ散歩。天気予報通り雨が降ってきて、国立天文台をまわったところで中止して帰宅。なかなか面白かった。ちょっとした発見もあったし。

このあたりも農地の宅地化が相変わらず盛んである。地域的に一戸建ての事業性がいいようで、建て売りのミニ開発が目立つ。しかしまあ、最近の建て売り住宅はいよいよもって実にろくでもない、醜悪な意匠が多い。基壇みたいに擬石貼って、玄関や窓に古典風の記号をちりばめたやつ。誰かがデザインしてるんだよな。