子連れオオカミ
今月は育児休暇中。
といっても、実は育児休暇制度を使っているわけではなくて、たまっていた会社の有給休暇をつかっているのである(もし育児休暇を取得したら、ウチの会社では男性としては初のケースになるところだった)。
ずっと休んでいるわけではなくて、妻の仕事(専門学校の非常勤講師)がある毎週月曜日と金曜日に休む。つまり週休4日。会社へ出勤するのは火水木の3日間である。
3日間なんて、あっという間だ。特に仕事のペースを落としているわけではないので、実に密度の濃い3日間になるし、手伝ってくれているスタッフにはやっぱり負担をかけているのだけれども。
一方で、月曜日と金曜日もあっという間に一日が終わる。乳幼児を保育しつつちょっと家事なんかしていると、ほとんど気が付いたら日が暮れているというような調子だ。オフィスでパソコンに向かっているよりも、肉体的には育児の方が消耗する。
昨日は、妻は午前中に仕事に出かけ、僕は体に湿疹ができたコドモを診せるために、駅前のクリニックへ出かけた。
『平日の昼間に子供を抱いてバスに乗っている』というのはちょっとした体験だ。
他の乗客がなんとなく道を譲ってくれるし、乗り合わせた見知らぬお婆さんやらがやたらと子供に笑いかけ話しかけてくる。コミュニケーション・メディアとしての乳幼児の能力は非常に高い。
途中から、同じような年齢の子供を抱いた若い母親と隣席したのだが、にっこりと笑みを交わし、お互いの子供に話しかけ、自分の子供に話しかけ、「抱っこ帯」にコメントし(お、Baby Bjornの新型ですね ←むろん僕のコメント)、地元の小児科医についての軽い情報交換までしてしまう。
バスで隣に座ったくらいで、若い異性がいきなり愛想良く話しかけてくる、なんて事態は、子供抜きではありえない(少なくとも僕の属している日常ではありえない)。なんか自分が普段とは異なる社会的レイヤーに居るのを感じる。まあもちろん、こういうのは「子連れレイヤー」だけじゃないだろうけれども。(僕の父は調布ヶ丘一帯の「イヌ連れレイヤー」に属していて、飼い犬を媒介にした独特のコミュニティ・ネットワークを持っている。)
ところで、子供を連れて散歩に出るたびに、「子連れ狼」を思い出す。主人公の拝一刀さん、父親がひとりで乳母車に幼児を乗せて旅を続けるというのは結構目立ったんじゃないかと思うのだが、町や村を通るたびに「子連れレイヤー」に巻き込まれなかったんだろうか。
「あらまあ!可愛いお坊ちゃんね」
「大五郎と申す」
「素敵なベビーカーですねー」
「アプリカの新型でござる」